【8月27日 AFP】イスラム教スンニ派(Sunni)過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」のシリアの拠点を米国が空爆する兆しを見せていることで、イラク戦争後のトラウマを経験した米政府による対外戦争の方針転換が露わになった。

 バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は1年前、シリア空爆に向けて動きながら、戦争で疲弊した国内で政治的孤立を招くことは不利と判断し、最後の段階で躊躇(ちゅうちょ)した。そしてオバマ大統領は再び、その瀬戸際に足を踏み入れているが、今回は政治の風向きが変わっているようだ。

 シリアで拉致された米国人ジャーナリスト、ジェームズ・フォーリー(James Foley)氏の殺害と「イスラム国」がテロの温床と化すことへの危惧は「戦争の波は引いている」との一方的な判断に基づくオバマ政権の外交政策に課題を突き付けている。

■際限ない関与を嫌うオバマ氏

 オバマ大統領はパキスタンやリビアで活動する国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)に効果的かつ限定的な攻撃を実行しつつも、中東情勢に際限なく関与することへの嫌悪感をまったく隠そうとしていない。

 ところがフォーリー氏の事件は、オバマ政権に直接向けられた挑戦だ。政治的理由だけをとっても、オバマ大統領がこれに反応しないことは考えにくい。欧米で勧誘された「イスラム国」の戦闘員たちが、ただ旅客機の搭乗券を買えば米国を恐怖に陥れることができる可能性は同大統領に、望まないのに回避できない新たな国外での戦争を提示している。

 しかし境界が消失状態にあるイラク、シリア国境に沿って「イスラム国」を壊滅させようと真剣に試みれば、それはオバマ政権が回避を前提としている中東情勢への際限なき関与へと発展していく恐れがある。にもかかわらず、米国防総省は「イスラム国」のシリア拠点に対する米軍の攻撃という選択肢を準備している。

 オバマ大統領は泥沼化しているシリア内戦に引き込まれる誘惑に長らく抵抗してきた。昨年もシリアでの化学兵器使用に対し、米軍が懲罰的攻撃を行おうという最後の最後に中止を命じた。今月、イラク国内の米国人外交官と、少数派のヤジディー(Yazidi)教徒の虐殺を阻止する目的で行ったイラク国内の「イスラム国」に対する攻撃でも、非常に狭い限定範囲を設定した。