■自閉症患者ではシナプスがはるかに多く残存

 今回の研究では、死亡時の年齢が2歳から20歳までの献体48体の大脳皮質から採取した組織を分析した。大脳皮質は、言語や社会的行動をつかさどる脳の部位だ。

 献体48体のうち26体は生前に自閉症と診断されており、22体は自閉症ではなかった。

 分析の結果、小児期早期にはどちらのグループも同様の数のシナプスを持っていることが分かった。

 だが自閉症ではない19歳の若者は、シナプスの数が幼児より約41%減少していたが、19歳の自閉症患者の脳内にはシナプスがはるかに多く残存しており、幼児の脳と比べて約16%程しか刈り込みされていなかった。

 またシナプスが過剰に存在することにより、脳を通る電気信号が増加するため、てんかんのリスクが高まることを研究チームは指摘している。

 さらにスルザー氏と研究チームは、自閉症患者の子どもと10代若者の脳内で、刈り込みメカニズムが正常に機能していないことを示すバイオマーカーとタンパク質を発見した。

 一部の自閉症患者にラパマイシンを適用して治療を施し、患者を衰弱させることもある症状の軽減が可能になるかもしれないと同氏は述べている。

 だが、まれな遺伝性疾患で、自閉症に関連付けられることが多い「結節性硬化症」の治療薬として臨床試験の段階にあるラパマイシンについては、現在の形式のものは免疫抑制剤でもあるため、特に体がまだ発達中の子どもや10代若者に長期的に用いる治療薬としては最善ではないかもしれないとスルザー氏は指摘している。(c)AFP