【8月18日 AFP】パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)の動物園では、壊れたおりの陰にライオンたちがぼんやりとたたずみ、その近くでは朽ちかけたサバンナモンキー2匹の死骸が放置されたままとなっている──。

 イスラエルとイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)との間で1か月以上にわたり続いている衝突により、施設および施設内の動物たちも大きな被害を受けている。

 ある飼育施設の片隅では、無数のハエがたかるペリカンがアヒルと一緒にうずくまり、そしてその向かいにはコウノトリの死骸が浮かぶ濁った水の中に小さなワニがじっとしていた。近くのおりにはレイヨウとガチョウが一緒に入れられ、また干からびたサルの死骸が横たわる小さな囲いの中では、力なく地面をほじるヒヒの姿もあった。

 動物園のシャディ・ハマド(Shadi Hamad)園長は、動物園がイスラエルの空爆によってダメージを受け、そして数多くの動物たちが死んだと話す。事実、園内には何週間も掃除されていないおりの不快な悪臭が漂っている。

 ガザ地区ビサン(Al-Bisan City)にあるこの動物園は2008年、ハマスによって建設された。全ての動物たちは、エジプトとガザ地区とを結ぶ地下トンネルを通って運ばれたという。しかし、このトンネルはハマスと主要な同盟関係にあったエジプトのムハンマド・モルシ(Mohamed Morsi)前大統領の追放に伴い、昨年閉鎖された。

 飼育員のファリド・ヒシ(Farid al-Hissi)さんは、「サル8匹とダチョウ1羽が殺された。ライオンの檻が大きな損傷を受け、動物園は完全に破壊された。ビサンの動物園は壊滅状態だ」と訴えた。

■悲しい光景

 ヒシさんは、破壊された動物園を見て震えが止まらなかったと話す。

「動物たちのおりがひどく損傷しているのがわかるでしょう。これを見ると悲しくなります。監獄にいるのと同じ状態ですから」

 オスとメスのライオンが鋼鉄の囲いの中でじっとしていた。おりの屋根は、近くで起きた爆発の影響で崩落してしまったとされる。2頭はほとんど物音すら立てずにいたが、ヒシさんが死んだニワトリを投げ入れるとようやく立ち上がった。

 ヒシさんは、園内に兵器はなかったと主張する。しかし園内に積み上げられた残骸の中には、ロケット弾を発射するための機器も残されており、またその一部には弾が装填されているようにも見えた。

 ハマド園長もロケット弾が園内から発射されたことはないと断言し、「ロケット弾の発射施設はここにはない。それでも動物園が罰せられた」と述べた。

 一方、ガザ市(Gaza City)北部ジャバリヤ(Jabaliya)にある、約半年前に完成したばかりの動物園では空爆による被害は比較的少なかった。しかし、動物たちへの心理的な影響はあったという。

 この動物園の園長は、「当園の動物たちに大きく影響したのは『音』だ。空爆の音が動物たちを怯えさせた。鳥は恐怖でパニックを起こし、おりの中を飛び回った。そのうちに何羽かが死んでしまった。また一部の動物は自らの子どもを見捨てた。そうした子どもの何匹かも死んだ」とその現状を明らかにした。(c)AFP/Tom LITTLE