【8月14日 AFP】サウナやノキア(Nokia)の携帯電話のほかに、フィンランドが世界に誇る輸出品と言えば、カバに似た架空の生き物「ムーミン(Moomin)」だ。

 今月9日、ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソン(Tove Jansson)氏が誕生してからからちょうど100年を迎えた。ムーミンの小説や漫画は世代を越えて世界の人々に愛され、中国語からエストニア語、エスペラントまであらゆる言語に翻訳されてきた。

 自然の中で暮らすムーミントロールの一家とその仲間たちが織り成す生活は奇妙で面白く、そして時に現実とかけ離れた世界を見せてくれる。人々はその独特な世界観に引き込まれてしまう。

 ムーミンの作者であるヤンソン氏が生まれたのは、1914年8月9日。画家を夢見て勉強を続けていたさなか、母国フィンランドにも第2次世界大戦の戦火が及んだ。旧ソ連との2度にわたる戦いで、同国では約10万人が命を落とし、広大な領土が失われた。そのような暗いムードが漂う中、ムーミンは生まれた。

 ムーミンを登場するヤンソン氏の本が初めて出版されたのは1945年。発売当初から大きなヒットとなり、同氏はフィンランド史上最も翻訳された作家となった。彼女が手がけた9冊のムーミン本は30言語以上に翻訳された。

 人々はムーミンの世界の「人生哲学」が好きなのだと、フィンランドの著名な文学誌「Parnasso」の編集者は述べる。ムーミンのストーリーは多面的で、大人の知性にも子供の感情にも訴えるとしながら、「冒険的なエピソードがたくさん描かれてはいるが、子供を楽しませるためだけの児童書によくあるパターンとは一線を画している」と説明した。