【8月9日 AFP】高齢者福祉施設に入居することは、冒険の日々の終わりと考えられている。だがスロベニアで誕生したネットワークはこの常識を覆し、世界各地を旅行したい高齢者にサービスを提供する取り組みに挑戦している。

 高齢者福祉施設の国際的なネットワーク「リンクドエージ(Linkedage)」の加盟施設に入居する高齢者たちは、国境を越えて他の加盟施設の高齢者と「部屋を交換」したり、別の施設の空き室を借りたりすることができる。旅行先の施設では必要なケアを受けることもできる。

 リンクドエージのウェブサイトでは滞在可能な施設がリストアップされており、高齢者は行きたい国や必要なケアなどに基づいて目的地を検索することが可能だ。リンクドエージを運営するIT企業ソシネット(Socinet)によれば世界で初めての試みで、同サービスは高齢者福祉施設の国際協会「E.D.E.European Association for Directors and Providers of Long-Term Care Services for the Elderly)」の支援を獲得した。

「まず欧州、特にスペインとフランス、ドイツに力を注ぐ考えで、それから世界へ広げたい」と、リンクドエージのDiana Galijasevic代表は語る。すでにインドネシアやメキシコを含む10数か国の100施設がネットワークに加盟したという。最初の居住者交換は数か月前にスロベニア国内の施設同士で行われた。国際交換は今夏初めて行われ、その後増える見通しだ。

■スロベニアとスペインの施設で居住者を「交換」

「機会を提示されたので、すぐスペインに行きたいと決めた」と、スロベニアのジョジカ・クセラさん(77)は語った。

 7月末、クセラさんはスロベニア北部の高齢者福祉施設の自分の部屋と、スペイン・バルセロナ(Barcelona)に近い地中海沿いのマタロ(Mataro)にある似たような施設の部屋を1週間交換した。

 クセラさんと部屋を交換したのはスペインのミケル・リバスさん(82)。スロベニアの施設での滞在について「まるで昼と夜ほどに違う。もちろんこっちが昼だ」と語った。

 かかった費用は、60ユーロ(約8200円)のリンクドエージの会費と航空機の費用だけだった。「また同じような冒険に行きたいね。写真を撮ったよ。できれば100枚撮ってほしいと言われていて、向こうに戻ったらプレゼンテーションをするんだ」とリバスさんは述べた。

■高齢化するヨーロッパ

 リンクドエージの創設者は、欧州の高齢化問題に触発されて同ネットワークを創設したと語る。経済協力開発機構(OECD)によれば、2060年までに欧州大陸の人口の40%が65歳以上になる。またOECDによれば欧州の高齢者福祉施設は現在、空き部屋が35%もあるという。(c)AFP/Bojan KAVCIC