【8月8日 AFP】ベトナムでは「小さなトラ」、つまり猫の肉の料理をビールのつまみにする人が後を絶たない。猫肉食は表向きには禁止されているものの、猫を飼っている人々はペットが食材として何者かに捕獲される不安を常に抱えながら生活している。

 首都ハノイ(Hanoi)市内中心部の洗車場の隣でひっそりと営業している飲食店では、猫を溺れさせ、毛皮を剥いでから、肉を刻んでにんにくと炒め、空腹の客に提供している。「猫肉を食べる人は多い。珍味なので試してみたいんだ」と、店長のトー・バン・ズン(To Van Dung)氏(35)は説明した。

 ベトナム当局は猫をネズミ駆除に役立てるのを奨励するため、猫を食用とすることを禁止しているものの、ハノイ市内には猫肉の料理を出す飲食店が依然として数十軒ある。猫の飼い主の多くは捕獲を恐れて家の外に出さないようにしているため、路上で猫を見かけることは滅多にない。

 飲食店の食材需要に対応するため、猫はタイやラオスから密輸される場合もある。太陰暦の月末に食べられることが多い犬肉とは対照的に、猫肉は太陰暦の月初に消費されるのが一般的だ。

 専門訓練を受けたハノイ市内で有数の獣医の1人、ホアン・ゴック・バウ(Hoang Ngoc Bau)氏は、他の国々でペットと位置付けられている動物を食べるベトナムの傾向について、長年の戦争による貧困の中、ベトナム人が生き延びるためにあらゆる物を口にしてきた結果だとの見解を示した。

 かつて厳しい統制下にあったベトナムだが、ここ数十年は社会や文化的姿勢が劇的に変化し、動物愛護意識を持つ人々は現在増えつつある。ただ、犬や猫の肉を食べる習慣はそう簡単になくなりそうにない。(c)AFP/Cat Barton