【8月3日 AFP】タイの女性に代理出産を依頼したオーストラリア人カップルが、生まれたダウン症候群の赤ちゃんを引き取っていなかったことが明らかになった。代理出産の支援団体は、オーストラリアが外国での代理出産の禁止に動くのではないかと懸念している。

 報道によれば、代理母となったタイ人の女性(21)が昨年12月に男女の双子を出産したが、代理出産を依頼したオーストラリア人カップルは健康な女の子だけ引き取り、ダウン症候群の男の子は引き取らなかった。

 女性は代理母になる条件として1万6000オーストラリアドル(約150万円)を受け取ったという。実子2人を学校に行かせ、借金を返済できる額だ。

 しかし女性は、ダウン症候群のほか生命の危険もある心臓疾患も患う、ガミー(Gammy)と名付けられた赤ちゃんを育てていかなくてはならなくなった。必要な医療費を払えるだけの財力もない。

 女性はオーストラリア放送協会(Australian Broadcasting CorporationABC)に、「どうしたらいいのか分かりません。私はあの子を引き取ることを選びました。あの子を愛しています。9か月も私のおなかにいたのですから」と話した。報道を受けて、先週立ち上げられた資金集めのウェブサイト「Hope For Gammy」には寄付とコメントが殺到し、今月2日までに14万米ドル(約1400万円)も集まった。

 謝礼を払って子供を産んでもらう商業的代理出産はオーストラリアでは認められていないが、医療費などの必要経費以外は払わない利他的代理出産は認められている。

 だが代理出産の支援団体サロガシー・オーストラリア(Surrogacy Australia)によれば、多くのカップルが国内で利他的代理母を探すより、国外での代理出産を選択している。年間400~500組がインド、タイ、米国などの外国で代理母を求めているという。

 同団体のレイチェル・クンディ(Rachel Kunde)代表は、今回の事例の詳細は明らかになっておらず、代理出産を依頼したカップルが男の子が生まれたことを知らない、あるいは流産したと聞かされている可能性もあると指摘。さらに、オーストラリアには代理出産に関する国レベルの法律がなく、すでに国外での商業代理出産を禁止する州も出始めており、国としての規制が必要だと語った。「私たちが最も恐れているのは、オーストラリアが外国での代理出産を完全に禁止してしまうことです。政府が国内での代理出産をもっと認めてくれるようになればいいのですが」(c)AFP