【8月2日 AFP】インターネットの検索結果から個人情報の削除を求める「忘れられる権利」をめぐり、米検索大手グーグル(Google)は7月31日、欧州当局に書簡を送り、削除の是非の判断に苦慮していると説明した。判断材料となる情報が少なすぎる上、プライバシーが公益に優先される場合のガイドラインが曖昧なためだという。

 グーグルのピーター・フライシャー(Peter Fleischer)プライバシー担当グローバル法務顧問が欧州連合(EU)のデータ保護委員会に宛てた書簡によると、7月18日現在、欧州の「忘れられる権利」に基づいて受けた削除要請は9万1000件で、削除を求められたリンクの数は計32万8000件に上った。

 要請が最も多かったのは約1万7500件のフランスで、次いでドイツが約1万6500件、英国から1万2000件、スペインが8000件、イタリアが7500件だった。グーグルは、このうち53%のリンクを削除したという。

■削除の判断「難しい」

 だが、グーグルによると、削除の是非を判断する際に、削除を要請した当人から提供された情報に頼らなければならないことが困難をもたらしているという。

「虚偽情報や不正確な情報を基にした要請もあった」と、フライシャー氏は書簡の中で述べている。「正確な情報が提供された場合でも、本人に不都合な情報は提供されないことがある」

 たとえば、未成年のころの犯罪歴に関するリンクの削除を要請してきた人物が、成人した後も似たような罪を犯したにもかかわらずその事実を隠したり、現在は政治家として選挙に出馬しているとの情報を提供しなかったりするかもしれない。また、同姓同名の他人の情報の削除を要請される場合もあり得る。

 グーグルはまた、何を公益と判断し、何を公益とはみなさないかの基準を明確にするよう当州当局に要請。さらに、政府がインターネット上に公開した情報に対して「忘れられる権利」は適用されるのかどうかを問いかけた。

■「情報の自由」との兼ね合いは

 欧州司法裁判所(European Court of JusticeECJ)は5月、情報が古かったり不正確だったりするなど特定の条件下では個人が自分に関する情報へのリンクの削除を求めることができるとして、通称「忘れられる権利」を認めた。

 これを受けてグーグルは、プライバシーの権利と情報の自由とのバランスを取ろうと努めている。これまでのところ、削除がおこなわれているのは人物の氏名など特定の検索ワードに関連したリンクのみで、また削除されたリンクも米国版サイト「Google.com」では閲覧が可能な状態だ。(c)AFP