【8月1日 AFP】政情不安が続く中国西部・新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)のカシュガル(Kashgar)市で7月30日、同国最大のモスク(イスラム礼拝所)の指導者が殺害された。同自治区政府が31日、発表した。

 新疆ウイグル自治区の政府系サイト「天山網(Tianshan)」によると、カシュガルにある創建600年のモスク、エイティガール寺院(Id Kah)で30日朝の礼拝後に、政府から任命された同寺院の指導者ジュメ・タヒール(Jume Tahir)師(74)が「宗教的な原理主義の影響を受けた暴漢3人」に殺害された。

 天山網によると、総動員で捜査に乗り出した警察は同日正午ごろ、「刃物とおの」で激しく抵抗する容疑者3人のうち2人を射殺し、残る1人を逮捕した。天山網は、タヒール師殺害は「計画的犯行」であり、容疑者らは「残虐非道な殺害」を計画し「『何か大きなことをすること』で自分たちの影響力を拡大しようとしていた」と報じている。

 米政府が出資するラジオ・フリー・アジア(Radio Free AsiaRFA)はこれに先がけウェブサイトで、タヒール師は礼拝所の外で血の海の中に倒れ死亡した状態で発見されたと報じた。

 イスラム教徒が大半を占める少数民族ウイグル人が住む新疆ウイグル自治区で激化している暴力は昨年、中国の他の地域へも飛び火した。

 中国では、イマムと呼ばれるイスラム教指導者や他の宗教の指導者は政府によって任命され、説教の中身は厳しく管理されている。31日の国営新華社(Xinhua)通信によると、タヒール師は「中国国内のイスラム教徒の間で非常に高名だった」という。

 一方、AFPの電子メール取材に応じた亡命ウイグル人組織「世界ウイグル会議(World Uyghur CongressWUC)」の広報担当ディルシャット・ラシット(Dilxat Raxit)氏は殺害事件を非難せずに、「この地域の中国政府の政策は、時に起こるべきことでないことを引き起こす。現地のウイグル人たちによれば、ジュメ・タヒール師は常に政府に協力し、宗教活動の監視を支援し、同モスクにおける自分の地位を利用し、ウイグル人には受け入れがたい中国政府の政策を促進していたという。地元のウイグル人たちは、同師が中国の公安省と特別な関係にあるのではないかと疑っていた」と語った。(c)AFP/Kelly OLSEN, Tom HANCOCK