【7月31日 AFP】薬剤耐性マラリア原虫が東南アジア・インドシナ半島4か国の国境地域を生息域として定着しているとした英大研究者らによる論文が30日、米医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」に掲載された。これによりマラリアの感染拡大を封じる国際努力が危機に直面していると、論文は警告している。

 熱帯医学を専門とする英オックスフォード大学(University of Oxford)のニコラス・ホワイト(Nicholas White)教授らによる研究は、東南アジアとアフリカのマラリア患者1241人から採取した血液サンプルを調べたもの。その結果、マラリア治療の特効薬とされるアルテミシニンに耐性を持つ原虫がカンボジア西部と北部、ミャンマー東部、タイ、ベトナムの国境地域に生息していることが確認されたという。さらに原虫定着の兆候は、ミャンマー中部やラオス南部、カンボジア北東部でもみられた。

 一方、調査対象だったアフリカの3か国(ケニア、ナイジェリア、コンゴ民主共和国)では、薬剤耐性を持つマラリア原虫は確認されなかった。

 論文は薬剤耐性マラリア原虫対策として、治療薬剤の投与日数を現行の3日間から倍の6日間に延長することが有効な可能性があるとしながらも、対応は急務だと訴えている。

 ホワイト教授は、アジアやアフリカで薬剤耐性マラリア原虫の拡大を阻止することは可能だとしたうえで、「そのために開かれている窓はすぐに閉まってしまう。従来のマラリア対策では不十分だ。一刻も早くより画期的な行動を起こし、この問題を世界の公衆衛生対策の最優先事項として取り組む必要がある」と語った。(c)AFP