【7月31日 AFP】月は完全な球形からはかけ離れており、地球に面している側とその反対側が高く出っ張った奇妙な形状をしている。だが理論上では、約44億年前に形成されて以降、回転力によって完全な球形に成形されているはずであり、科学者らは数十年間、この謎に頭を悩ませてきた。

 満月時に見える月の丸い形は、地球上にいるわれわれには非常になじみ深い光景だ。だが天文学者らによると、別の角度から見れば、極めてわずかにレモン形をしていることが分かるという。月の地形上にあるこの2つの巨大な出っ張り部分は、地球方向の軸上に並ぶこぶだらけの頂点を形成している。

 では、この出っ張りはどのようにして形成されたのだろうか。

 その答えは、月が超高温状態だった形成初期に地球から及ぼされた強力な重力にあるとする研究論文が30日、英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。

 火星サイズの浮遊惑星と地球との衝突の結果として形成されたと考えられている月は、当初は溶岩の塊であったが、後に冷えて固まり始めた。月の重力が海の満ち干を起こすのと同様に、月の6倍の質量を持つ地球は、新たに誕生した衛星である月の状態が遷移しているこの時期に、強力な潮汐力を月に及ぼした。

 潮汐力は月を伸縮させたが、この伸縮プロセスで摩擦による熱が発生した。半流動体だった月は、表面が冷えている間にこの熱で暖められた。この動的プロセスで生じた熱が不均一に伝播し、月の地殻の形成に影響を及ぼした。

 米カリフォルニア大学サンタクルーズ校(University of California at Santa Cruz)の天体物理学者、イアン・ガリックベセル(Ian Garrick-Bethell)氏は「初期に及ぼされた潮汐力により、月の地殻はさまざまな場所で熱を受けた。こうしてさまざまな場所で受けた熱の差によって、月の形状の大部分が形成された」と説明する。

 同氏は、AFPの電子メール取材に「その後、月は冷えている間にこの潮汐力によって外側がゆがみ、そのゆがんだ形のまま凍り付いた」と語った。「また同時に月は、自転の影響も少し受けた形状で固まった」

 研究チームによると、潮汐力は月に「わずかにレモン形の」形状を与え、この形は地殻が冷えた後に固定化したという。