【7月29日 AFP】オーストラリア・シドニー(Sydney)で29日、同市の目抜き通りへの設置が計画されている日本人建築家の巨大パブリックアート作品が発表された。だが、作品が同市の評判を上げるだろうとの声が上がる一方で、「ばかばかしい」との批判も上がっており、作品の評価は真っ二つに分かれている。

 東京を拠点に活動する建築家の石上純也(Junya Ishigami)氏がデザインを担当する高さ50メートルの鋼鉄製のアート作品「クラウド・アーチ(Cloud Arch)」は、同市中心部のビジネス地区や街路、公園の美化計画の一環として、ジョージ通り(George Street)をまたぐように設置される予定。

 ほかにもエジプト出身の芸術家ハニー・アルマニアス(Hany Armanious)氏が手がける高さ14メートル近い巨大なミルク箱のようなパビリオンや、英国の著名な芸術家トレイシー・エミン(Tracey Emin)氏による鳥をモチーフにしたブロンズ製のインスタレーション作品の設置も発表された。プロジェクトの予算総額は930万豪ドル(約8億9000万円)ほどになるという。

 だが、「クラウド・アーチ」のデザインについては誰もが納得しているわけではない。鋼板を二つの方向に曲がりくねらせながら細く延ばしたようなその外観は、ジェットコースターのコースや、糸ようじ、さらにはスパゲティの麺など、さまざまなものに例えられている。

 マイクロブログのツイッター(Twitter)上では、「市中心部に新しく設置される作品は、とんでもなくばかばかしい。市が選んだ最高のものがあれか?」との投稿や、アルマニアス氏の作品について「あの『ミルク箱』は全く滑稽だ」とのコメントもみられた。

 地元紙シドニーデーリーテレグラフ(Sydney Daily Telegraph)は、同市のクローバー・ムーア(Clover Moore)市長について、「クローバーの頭はクラウド(雲)の中にあるのか?」と問いかけた。また同紙のウェブサイトで実施されたアンケートでは、3分の2近くがこのプロジェクトは金の無駄と回答した。

 だが、この野心的なプロジェクトは賛同者も勝ち得ている。同紙のウェブサイト上では、「強欲な開発業者のせいでどんどん醜くなっていくこの街に、ようやく面白くて興味深いことが起きる」「素晴らしい試みだと思う。良くやった、クローバー!」といった読者からの投稿があった。

 一方のムーア市長も、一連の作品は市中心部の風景を変え、国際的な注目をシドニーに引き寄せるだろうと話している。

 世界25か国、700近い応募作品の中から選ばれた3作品は、2017年から設置が始まる予定。(c)AFP