【7月29日 AFP】南アフリカで下水に汚染された水道水を飲んだ赤ちゃん3人が次々に亡くなるという悲劇が起きた。原因は、アパルトヘイト(人種隔離政策)の下で少数の白人のためだけに設計されていた都市に黒人が流入し、その人口の変化に当局が対応できていないというものだった。

 亡くなった3人のうち、最も小さい子は生後5か月だった。先月、ヨハネスブルク(Johannesburg)の南西にある小さな町ブルームホフ(Bloemhof)で、大腸菌に汚染された水を飲んで死亡した。

 町の当局は、下水がダムに流れ込み水道水が汚染されたとしている。100人以上が下痢の治療を受けた。「インフラが老朽化していると誰もが理解している。だが小さな町なので財政の問題も抱えている」と、町の広報担当者は語った。

 現地紙シティ・プレス(City Press)が今月、調査したところによれば、北西(North West)州でも15人の赤ちゃんが汚染水を飲んで死亡し、大腸菌が原因だと判明した。

 この数か月は水不足のために全国各地でデモが行われている。警官との衝突で犠牲者が出た例も珍しくない。

 政府は水の供給における「広範な問題」を認めてはいるものの国民の9割はきれいな飲み水にアクセスできるとしており、水問題の解決に向けて引き続き取り組んでいくと約束した。

 南アフリカの水資源・環境省は、「急速な都市化」が全国民にきれいな飲料水を届けるのを困難にしており、「多額の費用をかけて古いインフラの改良を行っているところ」だとしている。

 南ア人種関係研究所(South African Institute for Race RelationsSAIRR)が昨年発表した調査結果によれば、同国の人口5200万人のうち、都市に住む人口は1990年の52%から2011年には62%に増えた。その主な理由として同研究所はアパルトヘイトが終わり、それまで白人の居住区域に入れなかった黒人が仕事を求めて自由に転居できるようになったからだと説明している。さらにこうした新しい都市にとっては、公共サービスの提供が大きな課題になっているという。

 だがこのような統計や課題を提示されても、ブルームホフでわが子を失った母親たちにとっては何の慰めにもならない。

 安全な水を飲めない問題は都市部だけの課題ではなく、同国の降水量の少ない地域にも広がっている。地方の村では、家畜と同じ泥水を飲んでいる人々もいる。(c)AFP/Sibongile KHUMALO