【7月28日 AFP】中国で北朝鮮から脱出した芸術家の展覧会が中止されたと28日、美術館側が発表した。中国当局が中止を命じたと報じられている。

 1998年に北朝鮮から脱出したスン・ムン(Sun Mu)氏は、北朝鮮政府のプロパガンダを風刺する作品を描いている。安全上の理由から名乗っているのは偽名だ。

 スン氏の個展は北京(Beijing)郊外の美術館で前週末から始まる予定だったが、韓国・聯合(Yonhap)ニュースによると「中国の警察が美術館を封鎖して入場者を入れないようにし、スン氏の絵画や、美術館の周りにあった宣伝用の横断幕などを撤去した」という。また「北京の北朝鮮大使館詰めと思われる北朝鮮人の姿も現場で目撃された」としている。

 作品は1作2万ドル(約200万円)にもなるというスン氏だが、北朝鮮に残してきた親族が報復されることを恐れて、自分の姿を写真に撮影させることはない。身元が暴露されないよう、今回の展覧会のオープニングにも作家本人が出席することはないと発表されていた。

 会場の扉には28日、「本展覧会の開催は中止されました。ご理解よろしくお願いいたします」と書かれた告知が張られていた。美術館スタッフは、AFPの取材に対し詳しく語ろうとしなかったが、中止の理由は「内部事情で」、運営側は別のプロジェクトに取り掛かっていると語った。

 中国当局はすべてのメディアやインターネットに関し、厳格な検閲体制を敷いており、芸術もそうした検閲の対象とされている。

 インターネット上に出回ったポスターによると今回の展覧会は「赤 白 青」と題され、主催者は「朝鮮半島の非常に複雑な状況の中心にいる」6か国(北朝鮮、韓国、中国、日本、米国、ロシア)の国旗の色を表していると述べている。

 28日、美術館のウェブサイトはスン氏の展覧会について何も言及していない。またAFPの取材要請に対し、北京の警察から反応はない。(c)AFP