【7月28日 AFP】一部外交面での影響力は弱まっているが、批判をものともせず自国の経済ルールを世界中で押し通し、さらにその適用範囲を拡大させている米国──。フランスの銀行最大手BNPパリバ(BNP Paribas)に対する米当局の措置は、その事象を顕著に示すいい例だ。

 BNPパリバは先月末、米国の経済制裁対象国であるキューバやイラン、ミャンマー、スーダンとの間で違法なドル取引を行ったとする米国の主張を認め、米当局に総額89億ドル(約9000億円)の和解金を支払うことで合意した。外国の金融機関に求められた罰金としては過去最大規模となった。

 BNPパリバの一件をめぐっては、フランスのミシェル・ロカール(Michel Rocard)元首相が、仏紙ルモンド(Le Monde)に掲載された論説で「権力の乱用」に当たると主張。米国は治外法権に基づいた一種の経済的「占拠」を行っていると非難した。

 米首都ワシントン(Washington D.C.)の弁護士、ファハド・アラビー(Farhad Alavi)氏は、「(米国の)制裁法の施行はここ10年で一段と積極的になっており、その適用範囲は、2001年9月11日の米同時多発テロへの対応から、外交政策手段にまで拡大している」とインタビューで指摘している。

 米国の外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)についても、単独行動主義だとの批判の声が上がっている。この法は、国外の金融機関に保有する米国人の口座情報についての報告を求めるもので、約70か国が関連協定を締結、7月1日から施行されている。

 2001年のアルゼンチン国債のデフォルトに関連した訴訟では、米裁判所は先月末、アルゼンチン政府に対し、05年と10年に実施した債務再編を拒否した債権者への支払いが完了するまでは、再編に応じた債権者への返済を停止するよう命じていた。

 BNPパリバの問題でダメージを負った仏当局は、ユーロ圏各国に対してユーロの使用促進の必要性を訴えた。仏石油大手トタル(Total)のクリストフ・ドマルジェリ(Christophe de Margerie)最高経営責任者はこれに同調し、「石油代金をユーロで支払うのを妨げるものは何もない」と明言した。

 このような「米国のルール」の影響はまだ中国には及んでいないが、そうなった場合はマイナスの結果を招く可能性もある。ワシントンのブルッキングス研究所(Brookings Institution)のエコノミスト、バリー・ボスワース(Barry Bosworth)氏は、米国のこうした規制が「あまりに厄介なもの」になれば、投資家は他の金融市場に移るだろうと説明している。

 ただ、米国では財務省にも産業界にも、ドル離れへの懸念はないようだ。ニューヨーク証券取引所(New York Stock Exchange)の元上級副社長、George Ugeux氏は「欧州で、米ドルに挑む総意はみられない」と述べ、少し前にユーロ圏がギリシャ危機で揺らぎ、ユーロが崩壊寸前だったことを忘れてはいけないと指摘した。(c)AFP/Jeremy TORDJMAN