【7月19日 AFP】「環境汚染への宣戦布告」をした中国は、関連法の改正から罰則強化まで、さまざまな手段で武装し、違反する者を完全に除去する構えだ。アナリストらはこうした政府の策を期待できると評価する一方、進展の保証はないとしている。

 中国は急速な経済成長に伴って、環境の問題を抱えることになった。大気汚染や水質汚染、土壌汚染といった問題は、健康や環境に悪影響を与えるだけでなく、スモッグが立ち込める息苦しいイメージで観光客やビジネスの機会を遠ざけている。

 在中国米大使館によると、北京では最近、PM2.5(微小粒子状物質)が1立方メートル当たり300マイクログラムを超えることがある。これは世界保健機関(World Health OrganisationWHO)の安全ガイドライン基準の12倍に相当するレベルだ。

 それでも、産業界や地方政府は収益を伸ばすことに躍起で、方針の転換を拒んでいる。中央政府が最優先課題に掲げる経済成長と、社会不安を回避するための生活水準の向上も環境対策と矛盾する内容だ。

 北京(Beijing)を拠点とする環境問題専門家の馬軍(Ma Jun)氏は「楽観はしていないが、明るい兆しを感じる」と述べ、「極めて具体的かつ大規模な行動計画が示されたが、実施段階にはかなりの困難が伴うだろう。多くの異なった利害、巨額の投資が絡んでくるからだ」と述べた。

 3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の閉幕にあたって行われた記者会見で、李克強(Li Keqiang)首相は、「環境汚染問題に宣戦布告する」と表明。小規模の石炭火力発電施設5万か所を閉鎖することや、ガス排出量の多い古い車600万台を廃車にすると明言した。

 政府は4月には環境保護法を25年ぶりに改正。施行は2015年で、違反行為への罰則が強化されるほか、一部の非営利団体に環境関連の訴訟を起こすことが認められる。さらに、中国の最高人民法院(最高裁)は今月3日、環境問題に関連した訴訟を審理するための特別法廷を設置したと発表した。

 だが、こうした政府の策がどの程度、効果的に履行されるのは疑問が残る。馬氏は、政府が大気汚染の度合いを示す指数の公表を拒んでいた数年前に比べれば、一連の誓約は劇的な変化だと評価する。

 中国はこれまでに、大気汚染の改善に関する目標を引き上げ、石炭を原料とする発電の割合を17年までに65%に抑えると誓約。さらに、大気汚染対策に5年間で1兆7000億元(約27兆7100億円)を投じることなども約束した。だが、目標は達成できていない。13年の時点で、74の主要都市のうち大気汚染の基準値を満たしたのはわずか3都市だった。

 米環境保護団体「天然資源保護協議会(Natural Resources Defense CouncilNRDC)」のアルビン・リン(Alvin Lin)氏は、新たな環境対策は「正しい方向を向いているが、実際に効果を発揮するには時間がかかる」との見方を示した。(c)AFP/Carol HUANG