■米国に代わる選択肢としてアピール

 今回のBRICS出席は、習主席にとって昨年の就任後2回目の中南米訪問だった。昨年はメキシコ、コスタリカ、トリニダード・トバゴを歴訪した。今回はブラジルの後に中国への主要な大豆輸出国であるアルゼンチンへ向かい、さらに産油国のベネズエラ、共産主義の同盟国キューバを歴訪する。

 BRICSは今回の会議で「新開発銀行(New Development Bank)」の創設で合意した。発展途上国のインフラ事業資金や緊急準備金を提供していく方針で、欧米が牛耳る金融機関に代わる選択肢として中南米諸国の首脳たちから称賛を浴びた。キューバのカストロ議長は書面で「公正で公平な新たな国際秩序への取り組みを歓迎する」と賛辞を贈り、左派のニコラス・マドゥロ(Nicolas Maduro)・ベネズエラ大統領は「世界で大きな存在である中国と中南米の相互尊重関係だ」とたたえた。

 今回の訪問で習主席は、米国に代わる存在として中国をアピールしていると専門家らはいう。ブラジル・サンパウロ大学(Sao Paulo University)の国際関係学教授、ルーベンス・フィゲイレド(Rubens Figueiredo)氏は「中国は、(中南米)地域の一部の国々が持つ左派寄りの政治的共感に沿う選択肢の一つだ」と語る。中国との膨大な量の取引により中南米との双方向貿易額は昨年、輸出入合計2616億ドル(約26兆円)に達した。

 米シンクタンク、スティムソンセンター(Stimson Center)の東アジア専門家、ユン・スン(Yun Sun)氏は、中南米への投資を増大させる中国だが米国を押しのけることは難しいだろうとし、「長い歴史と伝統を持つ米国と中南米の関係が、より歴史浅く限定的な中国の政治的、経済的な関与に簡単に影響されることはないだろう」と述べた。(c)AFP/Laurent THOMET