【7月17日 AFP】メキシコ当局は15日、同国西部ミチョアカン(Michoacan)州にある居住施設内を家宅捜索し、子ども458人を含む596人を保護したと発表した。荒廃した施設にはネズミや虫が多数見られたという。

 警察当局は、性的暴行や虐待、誘拐などの疑いでミチョアカン州サモラ(Zamora)にある慈善活動の保護施設「ラグラン・ファミリア(La Gran Familia)」を家宅捜索し、施設責任者のロサデル・カルメン・ベルデュスコ(Rosa del Carmen Verduzco)容疑者と従業員8人を逮捕した。同施設は40年以上にわたってサモラで運営されていた。

 子どもたちは現在も施設内で警察当局に保護されている。16日には、子どもたちを取り戻そうと、メキシコ全土から家族が施設前に集まった。施設内には40歳の成人もいたという。

 捜査当局者によると、ベルデュスコ容疑者らは施設居住者に「さまざまな肉体的、精神的虐待」を加えていたとされ、子どもたちに路上での物乞いを強要し、地面での睡眠のほか、十分な食事すら与えていなかった疑いがある。また一部の居住者には性的暴行を加えていた疑いもあるという。

 清掃作業員らと共に施設内に立ち入った児童権利活動家のマリア・アンプディア(Maria Ampudia)氏は、ベッドにはネズミやゴキブリがいたと説明。また「いつ食事がもらえるかわからないため(子どもたちはベッドに)ジャガイモを隠していた」とミレニオ(Milenio)テレビに語った。

■運営者は地元のボス、前大統領らが施設訪問

 事件が世界各国で報じられる中、ベルデュスコ容疑者は勾留下のストレスにより地元病院に入院した。

 ベルデュスコ容疑者は地元サモラでは、「ボス」と呼ばれ、敬意を集めると同時に時に恐れられる存在だった。同容疑者の運営する「ラグラン・ファミリア」は国政議員や地元政治家らが頻繁に訪問する場所でもあった。

 SNSフェイスブック(Facebook)にあるラグラン・ファミリアのページには、フェリペ・カルデロン(Felipe Calderon)前大統領や元州知事らと写るベルデュスコ容疑者の写真や、色とりどりの衣装を着ておもちゃの列車に乗ったり楽器を演奏しながら行進したりする子どもたちの写真が掲載されている。

 またフェイスブックには、ベルデュスコ容疑者が全ての子どもの里親になっていると記載されており、子どもたちは全員、姓がベルデュスコだとしていた。

 息子を取り戻しに施設に来た保護者の一人、アビゲール・マルティネスさんはAFPの取材に「ミチョアカン州検察官事務所で、『あの女性(ベルデュスコ容疑者)に対して手を出すことは不可能だ』と言われた」と語った。

 施設内で子どもを出産した元居住者のバーサ・サウセドさんはフォロテレビ(Foro TV)に対し、娘をベルデュスコ容疑者に取り上げられたと述べている。娘はダウン症候群児だという。

「娘が3か月の時に取り上げられた。6歳になったころから会いに来るようになったが(ベルデュスコ容疑者は)ダウン症候群を理由に絶対に面会させてくれなかった。お金を払わないと娘を返さなかった。でも娘が虐待されるのが怖くて苦情を申し立てることはできなかった」と、サウセドさんは話している。(c)AFP