■生産性向上のしわ寄せが従業員に

 12年7月、オレンジ(当時はフランステレコム)と同社のディディエ・ロンバール(Didier Lombard)元最高経営責任者(CEO)は同国で初めてハラスメントの容疑で訴追された。

 監視団体「ストレス・強制流動性監視所(Observatory for Stress and Forced Mobility)」によると、オレンジでは今年1~3月の3か月間で10人の従業員が自殺している。これは13年通年の自殺者とほぼ同じ数で、同団体はオレンジに対して「重大な警告」を発している。

 同団体広報担当者のピエール・モルビル(Pierre Morville)氏は、オレンジの大規模な人員削減計画が従業員に絶望をもたらしたと説明した。従業員10万人のうち3万人を削減する大規模な計画で、フランス国内では過去20年で最大規模だ。

 モルビル氏は「過剰な競争と市場の制約で、労働者は不安定になっている。米国や日本の経営手法が容赦のないやり方で適用されている」と話した。

 欧州労働安全衛生機関(European Agency for Health and Safety at Work)は、こうした問題はフランスに限ったことではないと指摘する。

 13年に発表された欧州31か国が対象の調査によると、職場でのストレスは労働者の半数以上が経験する日常的なもので、不安定な雇用、過度の仕事量、嫌がらせは、職場におけるうつの最も一般的な原因として挙げられた。

 職場のリスク分析を専門とする仏コンサルタント会社テクノロジア(Technologia)のドニ・マイヤール(Denis Maillard)氏は、「仕事に関連していたかつての身体的苦痛は、今は精神的苦痛に変わった」と説明した。

 過去5年間にフランス企業100社を調査したテクノロジアによると、生産性向上への要請から最も従業員が精神的な問題を抱えやすかったのは、フランス郵政公社と雇用局(Pôle emploi フランスの職業紹介・失業保険取扱い機関)だったという。(c)AFP/Béatrice LE BOHEC