【7月2日 AFP】ヒマラヤ山脈(Himalayas)の「雪男(イエティ)」が残したとされる体毛の正体は、実はクマもしくはヤギの体毛だった──このような研究結果が、英学術専門誌の英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)に掲載された。

 研究では、「異例な霊長類」のものとされる複数の体毛試料から採取したDNAが調べられたという。

 イエティをはじめとする未確認生物については、ネアンデルタール人(Neanderthals)の生き残り説をはじめ、人類系統樹からの分科説や大型類人猿のギガントピテクス(学名:Gigantopithecus)説などがある。

 英オックスフォード大学(Oxford University)のブライアン・サイクス(Bryan Sykes)教授(遺伝学)が率いた研究チームは2012年5月、複数の博物館や個人収集家から「異例な霊長類」のものとされる体毛試料の提供を呼び掛け、遺伝子配列の解析が可能な30件を入手した。そのうち3件はイエティものとされた。

 研究の結果、イエティものとされた3件のうち1件はスマトラカモシカ(学名:Capricornis sumatraensis)と呼ばれる東南アジアのヤギのものであることがわかった。残り2件はインドのラダック(Ladakh)とブータンからのもので、ホッキョクグマ(学名:Ursus maritimus)のDNAとの興味深い関連が確認された。これらについては、ホッキョクグマの遠い祖先に由来するものか、またはヒグマとの交配があった可能性が示されているという。

 研究ではまた「ビッグフット(Big Foot)」のものとされる毛髪試料18件についても、アメリカクロクマ、アライグマ、乳牛からヤマアラシ、オオカミ、コヨーテ、犬といった広範囲の動物のものであることが明らかになっている。

 中でも注目されたのは、米テキサス(Texas)州から入手したビッグフットの体毛房だったが、これは毛深い人間のもので、その遺伝子の適合から欧州地域の人間のものであると判断された。

 論文の筆者らは、未確認生物の存在を信じる人々やグループに対し、主張する内容を支えるためには、より納得力のある証拠を提示する必要があると指摘する。

「研究は、『異例な霊長類』試料の種同定をめぐる長年の不明確さに終止符を打つもので、今後の主張でも判断の元となる厳格な基準を打ち立てるものだ」

(c)AFP