【7月2日 AFP】国際医療支援団体「国境なき医師団(Doctors Without BordersMSF)」は1日、内戦状態に陥っている南スーダンでは、多数の入院患者が処刑されるなど、「人間の尊厳に対する侮辱」と言える状況にあり、ここ数十年で最悪の情勢に陥っていると訴えた。

 MSFの南スーダンでの活動責任者、ラファエル・ゴルジュ(Raphael Gorgeu)氏は、同国では入院患者が病床で銃殺されたり、救命用の医療設備に火が付けられたりしており、数十万人が医療サービスを受けられない状態となっていることから、今後への影響は計り知れないと指摘している。

 世界で最も若い国である南スーダンでは、昨年12月中旬から続く内戦による死者が数千人を超え、家を逃れた人の数は150万人を上回った。政府と反政府勢力との和平協議は滞ったままだ。

 過去6か月の状況を検証した報告書でMSFは、4か所の病院が襲撃され、58人が殺害されたとした上で、「負傷者や病人、病院に避難する人々、そして医療施設そのものへの攻撃は、国際法や人道に関する原則に反しているだけでなく、人間の尊厳への侮辱だ」と批判。南スーダンの現状は、MSFが近年見てきた中でも最悪のもので、20年近くにわたって続き、約3年前の南スーダン独立につながったスーダン内戦の当時でさえ、現在ほどの惨状ではなかったと指摘している。

 また MSFは、約30年にわたる同地域での活動の中で、医療施設の職員や患者、車両や設備への襲撃を繰り返し目撃してきたとしつつも、「現在の紛争において特に憂慮すべきなのは、暴力の規模と範囲だ」と述べている。

 南スーダンについては複数の援助機関が、今後も戦闘が継続すれば深刻な飢餓が発生する恐れがあると警告している。国内ではコレラも流行しており、すでに50人近くの死者が出ている。

 サルバ・キール(Salva Kiir)大統領の政府軍と、リヤク・マシャール(Riek Machar)前副大統領が率いる反政府武装勢力とが続ける戦闘では、国内各地で残虐行為が報告されている。両者は先月、3度目となる停戦合意を発表。60日以内に暫定政府を発足させることで合意したものの、その後も戦闘は継続している。(c)AFP