【7月1日 AFP】前日にイスラム過激派組織「ボコ・ハラム(Boko Haram)」とみられる武装集団が複数の教会を襲撃して50人以上が死亡したナイジェリアで30日、サッカーW杯ブラジル大会(2014 World Cup)決勝トーナメント1回戦フランス対ナイジェリアのパブリックビューイングが各地で行われ、襲撃の危険をものともせず会場に集まったサポーターたちが声援を送った。

 北東部ボルノ(Borno)州チボク(Chibok)近郊の4つの村で6月29日、武装集団が複数の教会を襲撃した。チボクでは今年4月にボコ・ハラムが200人以上の女子生徒を拉致する事件も起きている。ナイジェリアの北・中部全域でイスラム過激派が攻勢を強めていることを受けて警察は自宅での観戦を呼び掛けたが、各地に設置された大型スクリーンの前には多数の市民が集まった。

 ナイジェリア第2の都市カノ(Kano)から来たという観客の一人は、「イーグルスの試合を見るため身の危険も顧みずここに来た。サッカーに対する情熱と、大好きな代表チームに対する愛があるからだ」と語った。

 首都アブジャ(Abuja)のバーで観戦した人は「自宅に電気がないのでここに来ました。たぶん何も起こらないんじゃないかな」と話した。別のサポーターは、「もし僕が殺されても、ナイジェリアが勝つならたいした問題じゃないよ」と話した。国内各地のパブリックビューイング会場では厳しい警戒態勢が敷かれ、このバーでもかばん類の持ち込みが禁止された。

 試合はフランスが2-0でナイジェリアを破り、2回戦へと駒を進めた。

 6月29日の事件の目撃者証言によると、武装集団は複数の教会に爆発物を投げ入れ、建物に放火し、逃げ惑う信者らに発砲したという。メディアへの死傷者数公表を許可されていないとして匿名で取材に応じた同州当局者は「これまでに54人が死亡した」と語った。

 残忍な事件は襲撃発生地から約2000キロ離れたナイジェリア最大の都市ラゴス(Lagos)でさえW杯のお祭りムードに影を落としている。同市の高級地区でブックメーカー(賭け屋)を営む男性は、「ここは南西部だから(ボコ・ハラムの暴力行為とは)無縁だ。だが北東部の同胞のことを心配している」と話した。

 ボコ・ハラムは2009年以降数千人を殺害したとみられているが、今年前半は特に犠牲者が多く、2000人以上が命を奪われている。北東部では1年前から軍がボコ・ハラム掃討作戦を実施しているがほとんど成果を上げていない。ラゴスや首都アブジャ(Abuja)にいる外国人に対しても、ナイジェリア対フランスの試合をパブリックビューイング場やバーなどで観戦しないよう、警戒情報が出されていた。(c)AFP/Aminu ABUBAKAR