【6月26日 AFP】フランスで末期症状の患者計7人に薬物を投与し殺害した罪に問われていた元医師に対し、仏南西部ポー(Pau)の裁判所は25日、無罪を言い渡した。安楽死が違法なフランスで、この裁判は感情的な注目を集めてきたが、無罪の判決に法廷では拍手が湧き起こった。

 南西部バイヨンヌ(Bayonne)の病院で救急救命室の医師として勤務していたニコラ・ボンヌメゾン(Nicolas Bonnemaison)被告(53)は2010年3月から11年7月にかけて、特に衰弱していた女性患者5人と男性患者2人に「薬物を投与して毒殺」した罪で起訴された。これによりボンヌメゾン被告は医師資格を剥奪され、今月11日に始まった裁判では終身刑となる可能性もあった。

 裁判では、一人で決断を下さねばならなかった医師の孤独や苦悩、一人の医師に権限を委ねる危険性などが明らかにされ、ポーの裁判所は25日、ボンヌメゾン被告に対する全ての罪状について無罪とした。無罪判決を聞いた被告は、笑みを浮かべて弁護士と手をとりあった。

 前日には、行政裁判所の最高裁にあたる国務院が、植物状態にある四肢まひ患者の安楽死を認める画期的な判決を言い渡している。だが判決については患者の家族の意見が分かれ、欧州人権裁判所(European Court of Human Rights)も即時に介入した。

 ボンヌメゾン被告の無罪判決について、仏政府のステファーヌ・ルフォル(Stephane Le Foll)報道官は与党・仏社会党には「(安楽死に関する)法的な枠組みを作る責任がある」との見解を示した。フランスで認められているのは延命治療を中止することによる「消極的安楽死」のみで、フランソワ・オランド(Francois Hollande)大統領は2012年の選挙戦で、安楽死の法制化を検討すると公言している。(c)AFP/Philippe BERNES-LASSERRE