【6月26日 AFP】米ニューヨーク(New York)で25日、中国人富豪がホームレス250人を高級レストランに招待し、3品のコースランチを振る舞う慈善活動を行った。ところが、約束されていた現金300ドル(約3万円)のプレゼントが反故(ほご)にされたと、ホームレスたちの激怒を買う事態となった。

 それは当初、素晴らしいアイデアに思われた。リサイクル事業を手掛ける実業家、陳光標(Chen Guangbiao)氏は先週、米各紙に広告を出し、セントラルパーク(Central Park)内にあるボートハウス(Boathouse)での一流の食事と出席者1人につき300ドルのプレゼントを約束した。

 バスに乗って到着した招待客たちは、黒いスーツに蝶(ちょう)ネクタイを結んだ給仕のサービスで、マグロのたたき、ヒレ肉のステーキ、季節のベリーというランチを味わった。だが、現金が提供されないと分かるや、怒りの声が上がった。

■「嘘をつくな!」「利用された」

 招待客の1人が叫びだしたとき、陳氏は中国人記者団の取材に応じていた。各テーブルにはデザートが運ばれていた。

「嘘をつくな!」と、米海軍元衛生兵のアーネスト・サンピエールさんは言った。「われわれは300ドルのためにここに来たんだ。なのに、彼は態度を変えた」

 陳氏は通訳を通じ、昼食会の開催に協力した団体「ニューヨーク市救済ミッション(New York City Rescue Mission)」へこれから向かうが、一緒に行かないかと招待客らを誘った。だが、サンピエールさんは「この大金持ちが、新聞に(300ドルを払うと)掲載したんだ」と記者団に不満をぶちまけた。

 ベトナム戦争帰還兵のハリー・ブルックスさんも、食事は「とても」おいしかったが、もし現金がもらえないとしたら「非常に気を悪くする」と語った。

 招待客全員が不機嫌だったわけではなく、食事はおいしく「最高」の体験だったと述べた人たちもいた。だが、帰りのバスに乗るためレストランの外に案内され、行列を作った人々の間に不満は広がった。

 クイン・シャバズさん(34)は、ホームレスが利用されたと感じたと話した。ランチ会場のレストランには多数のテレビカメラや記者たちが集まっていた。「派手な売名行為だ」

 アル・ジョンソンさん(42)はプレゼントの300ドルで生活を立て直し、テキサス(Texas)州に暮らす家族の元へ帰ろうと計画していたと訴えた。「このランチが、私の人生を変えるはずだった。これはペテンだ。シャッターチャンスのために利用されたんだ」

■「プレゼントではなく寄付」と協力団体

 ニューヨーク市救済ミッションのクレイグ・メイズ(Craig Mayes)事務局長は、裏切り行為は一切なかったと主張し「誠に申し訳ないが、新聞(の広告)に誤表記があった」と釈明した。

 一方、同団体広報主任のミシェル・トルソン(Michelle Tolson)氏は24日、現金の提供はなく、代わりに同団体に9万ドル(約900万円)を寄付するよう1か月半かけて陳氏を説得したと説明。寄付金は同団体の年間500万ドル(約5億円)に上る予算に組み込まれ、ホームレス向けの炊き出しや緊急一時宿泊施設に活用されると述べていた。(c)AFP/Jennie MATTHEW