【6月23日 AFP】欧州連合(EU)は今月、食料価格の高騰と環境汚染につながるとの批判を受けて、農産物から直接作られるバイオ燃料の使用を制限することで合意した。

 EU28か国の代表は、とうもろこし、ビートルート、ナタネなどから作られる「第一世代」のバイオ燃料の使用を削減することで合意し、約1年続いたこう着状態に終止符を打った。

 今回の取り決めでは、食料品から作られる燃料の輸送分野のエネルギー源としての使用が、2020年までに7.0%に制限される。2009年に設定された本来の目標10%から引き下げられたかたちだ。

 EUは、全世界の炭素排出量を削減するため、石油などの化石燃料に代わる農作物から作られる燃料、いわゆる第一世代バイオ燃料の利用を率先して促進してきた。

 しかし、こうしたバイオ燃料使用の義務化によって、全世界の食料供給量の一部が奪われ、最貧国の一部に価格高騰を招いているとの批判が高まっている。

 また、バイオ燃料の原料を栽培するための土地転用が、とりわけ東南アジアのマングローブの沼地で行われるとすれば、EUが推進するバイオ燃料が環境保全の解決策とはならないのではないかとの議論もある。

 EUの行政機関である欧州委員会(European Commission)は、当初5.0%の制限を支持しており、今回の合意内容は期待したよりも弱いとの認識だ。欧州委のギュンター・エッティンガー(Guenther Oettinger)委員(エネルギー担当)は、「それでも、何も決まらないよりはまだいい」と話している。

 一方で活動家らは、世界規模の人口増加にともない食料供給がますます困難になっており、今回の取り決めではバイオ燃料がそうした状況に与える影響を抑制するのに十分ではないと指摘している。

 国際NGOオックスファム(Oxfam)のEUバイオ燃料専門家、マーク・オリビエ・ヘルマン(Marc-Olivier Herman)氏は、「この合意は、常識に対する侮辱だ」と話し、「飢えに苦しむ国では、燃料のために使う食糧を段階的に廃止することが唯一の分別ある行動だ」と訴えた。

 この法案は今後欧州議会に送られ、6.0%の制限を目指すとみられるが、来月EU議長国を引き継ぐイタリアのクラウディオ・デ・ビンセンティ(Claudio de Vicenti)エネルギー相は、欧州議会での通過は「難しいだろう」との見解を示している。(c)AFP