【6月16日 AFP】恐竜は、今日の爬虫(はちゅう)類のような変温動物でもなく、哺乳類や鳥類のような恒温動物でもなかったとする、数十年間にわたって古生物学者らの関心を集めてきた問題に答えを出すことを目指した研究論文が13日、米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。

 米ニューメキシコ大学(University of New Mexico)などの研究チームが発表した論文によると、有史以前の生物である恐竜の代謝速度は、両者の中間に位置するという。

 動物の体温調節が外的な条件に左右されるか、体内の仕組みで行われるかによって、生物種を2つの異なるグループに分ける一般的な分類方法は正確ではないことを、今回の結果は示唆している。

 また恒温動物は同等の変温動物に比べて活動性が高く、成長が速いという傾向があるため、今回得られた答えは、恐竜の行動の謎を解明する助けになるかもしれない。

 ニューメキシコ大の生物学者、ジョン・グレイディ(John Grady)氏率いる研究チームは、大昔に絶滅した生物の代謝を調べるため、数種の恐竜の化石にみられる成長輪(年輪)を測定し、誕生から成体になるまでの成長パターンを推定した。

 この結果と、絶滅種と現存種の両方を含むその他の動物400種の基準値との比較を行ったところ、恐竜の代謝速度は変温動物と恒温動物の中間に位置するとの結論に達した。

 研究チームは、恐竜をマグロ、ある種のサメ、オサガメなどに最も近い代謝速度を持つ「中温動物(mesotherms)」という中間的なカテゴリーに分類した。

 研究チームは「この種の動物は、体温を維持するために体内で生成された代謝熱に依存する場合がある一方で、別の場合には外部の気温に左右されることもある」と指摘、こうした特徴は現代の動物にはあまりみられないものだと付け加えた。

 今回の研究結果は、科学者らが2億4800万年前から6500万年前までの中生代の生態系に関する理解を深める助けになるとともに、中生代の他の動物の代謝速度を推測するために用いられるかもしれない。

 科学者らは長年、恐竜は変温か恒温かをめぐり議論を重ねてきており、19世紀以降は生理学的な要因に基づき、恐竜恒温説に傾きつつあった。

 同説への支持は、ヴェロキラプトルのような動きが速く活動力に富んだ恐竜の発見によって一層高まった。十分なエネルギーを燃焼するためには、ヴェロキラプトルは恒温だったに違いないと科学者らは示唆していた。

 だが今回の最新論文の執筆者らによると、恐竜は速すぎず遅すぎずの中間的な速度の代謝のおかげで、他の動物よりもはるかに体が大きくなり、生態系を支配できたのだという。

 恒温動物は通常、自身の体内温度を維持するために大量の餌を食べる必要があり、狩りを頻繁に行ったり、膨大な量の植物を食べたりしなければならない。(c)AFP