【6月15日 AFP】パレスチナ自治区ヨルダン川西岸(West Bank)でイスラエルの10代の若者3人が行方不明になっている問題で、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は15日の閣議の冒頭、3人を誘拐したとして、パレスチナのイスラム組織ハマス(Hamas)を名指しで非難した。また軍は声明で、3人の捜索に関連し、14日夜から15日朝にかけて約80人のパレスチナ人を逮捕したと発表した。

 行方不明になっている3人は12日夜、ベツレヘム(Bethlehem)とヘブロン(Hebron)の間に位置するユダヤ人入植地、グッシュ・エツィオン(Gush Etzion)付近でヒッチハイクをしていたところ誘拐されたと報じられている。3人は西岸地区の南部にある2つの神学校に通う学生で、1人は米国籍も持っているという。

 行方不明になっている3人は、ヨルダン川西岸のラマラ(Ramallah)近くにあるタルモン(Talmon)入植地に住むギラド・シャエル(Gilad Shaer)さん(16)、イスラエルのノフアヤロン(Nof Ayalon)在住のナフタリ・フレンケル(Naftali Frenkel)さん(16)、テルアビブ(Tel Aviv)に近いエラッド(Elad)在住のエヤル・イフラフ(Eyal Ifrach)さん(19)。

 イスラエル政府は陸軍や国境警備隊を動員して過去数年で最大規模の一斉逮捕を実施。拘束した80人の多くはハマスの関係者だった。

 3人が行方不明になった日から10日前の今月2日、パレスチナ解放機構(PLO)とハマスはパレスチナ暫定統一政府を発足させていた。PLOが、イスラエルを解体させると公言しているハマスと和解したことにイスラエル側は激怒。ネタニヤフ氏は3人の若者を無事に帰す責任はパレスチナ自治政府とマフムード・アッバス(Mahmud Abbas)パレスチナ自治政府議長にあると主張していた。

 一方、ハマスの報道官は、「ネタニヤフの声明はばかげている。(パレスチナ人80人の)逮捕はハマスの運動の解体を狙ったのだろうが、それが成功することはないだろう」と述べ、一夜に多数の人を逮捕したことは、3人が行方不明になったのが誰の仕業なのかイスラエル当局には見当もついていない証拠だと指摘した。

 さらに同報道官は、「パレスチナ立法評議会(Palestinian Legislative CouncilPLC)の議員やハマス幹部が逮捕されたことはイスラエルの新たな侵略であり、イスラエルがやみくもに騒ぎを起こしていることを示している。われわれは国際社会に、この犯罪をやめさせてくれるようお願いする」と述べた。立法評議会はパレスチナ自治区の議会だが、ハマスとパレスチナ解放機構主流派ファタハ(Fatah)の対立で、長い間、開かれていない。(c)AFP/Jack GUEZ