【6月16日 AFP】シエラレオネで、致死性の高いエボラウイルスに感染したものの、国内で初めて完治したとされる妊婦が、「奇跡」の回復を果たした喜びを語った。

 ビクトリア・イラー(Victoria Yillah)さんは、入院先の東部ケネマ(Kenema)の病院で数週間闘病生活を送り、生死の境をさまよった後、8日に無事退院した。

 イラーさんは13日、シエラレオネ国営放送の取材に対し、「この苦しみから生還できたことを神様に感謝しています。それ以上言いようがないほどうれしい」と語った。取材中には国営放送の本部前に大勢の人々が集まり、「今年一番の奇跡が起きた女性」だとしてイラーさんを祝福。イラーさんの夫サイドゥ(Saidu)さんは、「神と、妻の命を救うため尽力してくれた全ての皆さんに感謝する」と語った。

 首都フリータウン(Freetown)の西方320キロに位置するケネマの保健当局によると、エボラの完治者はイラーさん以前に一人もいなかったが、その後さらに3人が完治している。

 エボラ出血熱は感染から数日で発症し、重度の発熱や筋肉痛、衰弱、嘔吐(おうと)、下痢といった症状が出る。中には、内臓器官の機能が停止したり、出血が止まらなくなったりする例もある。シエラレオネの隣国ギニアで始まった今回の流行では、これまでに200人余りが死亡している。

 治療薬やワクチンは開発されていないが、医療支援団体「国境なき医師団(Doctors Without BordersMSF)」によると、こまめな水分補給と2次感染を防ぐ治療を実施した場合、生存率は大きく上昇するという。

 イラーさんは自身の年齢や出産予定日を明らかにしていないが、年齢は30代とみられている。病院関係者は匿名を条件に、強い免疫力と優れた治療の相乗効果がイラーさん生還の要因だとコメントした。(c)AFP/Rod Mac Johnson