【6月12日 MODE PRESS】仏・パリ市内のグランパレで9月11日から21日まで、世界最大の国際アンティーク展示会「パリビエンナーレアンティーク」が開催される。今回で27回目を迎える同展の開催に先駆け、フランス国立アンティークディーラー協会(Syndicat National des Antiquaires - SNA)のクリスチャン・デディエ(Christian Deydier)氏が来日し、インタビューに答えた。

■インタビュー:クリスチャン・デディエ氏

―今回の来日の目的は?

「パリビエンナーレアンティーク」は、今から54年前に、世界中を飛び回るディーラーたちの負担を軽減するため、ひとつの場所に集約することでよりよい環境が整うのではないかと思ったことがきっかけで、当初約10人のアートディーラーたちによってスタートしました。ここでは、世界中のディーラーとコレクターたちが一堂に会し、歴史的、文化的にも価値のある作品を観ることができ、共有する場を提供しています。

 この取り組みが徐々に成功したことで、規模も少しずつ大きくなり、現在、グランパレで開催するようになりました。また、我々の活動を一人でも多くの方に知っていただくため、現在、世界中で広報活動を行っています。今回の来日では、日本の方たちにも本展について知ってもらえればと思っています。

―これまでのビエンナーレと大きく違う点はなんですか?

今回は、ベルサイユ宮殿400周年記念ということもあり、宮殿のお庭をイメージした内装になる予定です。今回も世界中から集まったディーラーさんたちが、各ブースですばらしい装飾を企画しているようですが、それは当日まで秘密です。また今回の目玉としては、紀元前3世紀のブロンズ作品を展示することになっています。会場では、それ以外にも貴重な作品が世界中から一堂に集まるので、歴史を知る上でも、また文化を知る上でも、またとない機会になるでしょうね。

―本展をより一層楽しむためのポイントは?

今回、世界中をまわっていろいろな方たちとお会いしていますが、そのなかでも、本展は日本人の方たちには非常に理解していただきやすいのではないかと感じています。と言いますのも、やはり日本の方達は、文化を大切にし、繊細な感性と細やかな気遣いができるように、歴史的価値のあるアンティークに対しても深い部分で理解を示してくれます。

 また今回のビエンナーレでは、日本の庭園をテーマにしたブースも作る予定です。その中で、日本の埴輪を題材にしたものを展示します。日本の方たちも、初めて見るようなものが並ぶので、日本の歴史を知る上でも、非常に興味も持っていただける内容になっていると思います。今回は中国より日本の文化を提供していきたいと思っています。それは私自身、日本に大きな敬意を込めたものでもあります。

—クリスチャンさんが考える日本の魅力とは?

私は、カンボジアのラオスで生まれで4歳まで育ちました。父親が仏教や中国について勉強していたことや、祖父がアジアに関する書籍や辞典の出版をしていました。パリに戻った後も、母が中国や日本の博物館でキュレーターをしていたこともあり、日本や中国、アジア全般の文化に触れる機会が多くありました。そういったこともあり、アジア的な感覚や匂い、食べ物の味など、すべての記憶が自分自身の中に今もしっかりと残っています。

 アートに関しては日本とフランスは似ているところがあると思います。なかでも日本のコレクターは非常に感覚が優れています。学術に関してもレベルの高い方たちがたくさんいますので、コレクションも日本には素晴らしいものが揃っています。

 アートはその国の文化として残さなければいけないものです。フランスの画家たちも葛飾北斎に影響されましたし、日本人はフランスのインプレッショニズムとか、大好きなのでやはりお互いのそういう交流や意見交換を通して昔から文化活動を行っていました。

 特に日本とフランスは、アートという分野において非常にオープンであるという共通点があると私は思っています。また、人生を楽しむことをとてもよく分かっているではないでしょうか。 また日本には伝統や技術をちゃんと守っていく姿勢が根付いています。名人は国宝というものがあるように、フランスにも、文化として国が伝統や技術、職人を守ることに重きを置いています。自国の文化、歴史を次の世代につなげていくことを視野に入れているところなどの共通点は大きいと思います。

―最後に、アンティークの魅力について教えてください

 アンティークの世界でオークションは、『投資』という感覚を持っていらっしゃる方も多くいますが、まずなによりも『楽しむ』ということを忘れてはいけないと思っています。私の持論ですが、美術や食べ物は『楽しむ』ことで、お金儲けは『仕事』ですればいいと。アンティークを単なる『ビジネス』ではなく、人がこれまで歩んできた文化、そして歴史を紐解くひとつだと考えてもらえれば幸いです。またその文化と歴史は、多くの人とシェアできるものだと思っています。そのためにも、パリビエンナーレアンティークという存在を広く知っていただきたいですね。

■LA BIENNALE PARIS Antiquaires et Haute Joaillerie
会期:2014年9月11日~21日
場所:Avenue Winston Chrurchill 75008 Paris,FRANCE
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