【6月11日 AFP】2010年のサッカーW杯南アフリカ大会(2010 World Cup)でのフランス代表を言い表すとすれば、大々的に報じられた大惨事では言葉として公平を欠く――実際は、それより悲惨なものだった。

 悪い予兆はすでに存在していた。レイモン・ドメネク(Raymond Domenech)監督が率いるフランスは、アイルランドとの欧州予選プレーオフで、ティエリ・アンリ(Thierry Henry)の手に当たったゴールで決勝点を挙げ、南アフリカ大会への切符を手に入れていた。

 自滅する癖が復活したニコラ・アネルカ(Nicolas Anelka)は、ほとんど信頼されていないドメネク監督に対して暴言を吐き、大会の途中で帰国させられた。

 そして、事態は最悪な方向へと向かい、「インクレディブル・サルク(驚くべきふてくされ男)」のアネルカに対する扱いに怒った選手たちは、キャンプ地ナイズナ(Knysna)の地元住民の前でバスを降りて練習をボイコットし、チームのイメージを地に落としてしまったのだ。

 W杯終了後、アネルカに加え、カメラの前でドメネク監督と口論になった主将のパトリス・エヴラ(Patrice Evra)、ジェレミ・トゥララン(Jeremy Toulalan)らには厳しい処分が下された。

 フランスサッカー連盟(French Football FederationFFF)のジャンピエール・エスカレット(Jean-Pierre Escalettes)会長は、「最も腹立たしかったのは、心理戦が繰り広げられたことだ」と述べ、のちに辞任している。

「50年間積み上げられてきたものが、崩れ去った思いだ。このような恥ずべき事態がフランスサッカー界にもたらされたことは、大会の惨めな結果よりもはるかに悪い」

 ドメネク監督自身も、フランスの敗退が決まったグループリーグ最後の試合で、南アフリカのカルロス・アルベルト・パレイラ(Carlos Alberto Parreira)監督との握手を拒んで醜態をさらし、国際舞台から去った。

 ドメネク監督は、バレイラ監督に対する無礼な行為についての理由を答えなかったが、のちに、「あれは、嘆かわしい振る舞いだった」と述べた。この発言は、この一連の騒ぎをまさに総括している。(c)AFP