【6月8日 AFP】国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は6日、イラク西部アンバル(Anbar)州で数か月にわたって続いている戦闘により、自宅を追われた国内難民の数が48万人近くに達した可能性があると明らかにした。

 スイス・ジュネーブ(Geneva)で記者会見したUNHCRのエイドリアン・エドワーズ(Adrian Edwards)広報官は、「イラク政府によると、今年1月に同州での戦闘が激化し始めて以降の国内避難民は、本日(今月6日)現在で約43万4000人に上っている。しかし、イラク当局は1か月ほど前から、不安定な情勢を理由にやむなく避難民の登録受け付けを中止しており、実際の状況は把握できていない」と説明。「UNHCRは、現在の国内避難民の数は48万人に近いとみている」と述べた。

 こうした危機的状況の影響を受けた人たちのため、UNHCRは今年3月から支援を呼び掛ける活動を開始した。しかし、集まった金額はこれまでのところ、必要とされる2640万ドル(約27億円)のわずか12%にとどまっている。

 内戦が続く隣国シリアと国境を接するアンバル州では昨年12月、州都ラマディ(Ramadi)でイスラム教スンニ(Sunni)派のアラブ人が長期にわたって運営してきたデモキャンプを治安部隊が排除。これをきっかけに周辺地域は危機的状況に陥った。

■長期化する戦闘

 デモキャンプの排除後、反政府勢力は首都バグダッド(Baghdad)に近い同州ファルージャ(Fallujah)の全域とそのさらに西方のラマディの一部を掌握。その後、戦闘が長期にわたってもなお、砲撃やミサイル攻撃は州内各地で続いており、問題解決の糸口は見えていない。

 エドワーズ氏によると、反政府勢力側が州内のダムを破壊した後、国内避難民は急増した。水浸しになったダム周辺の約7万2000人が自宅を離れて避難した。さらに、ダムの破壊によって人々が清潔な水の入手に苦しむことになり、健康リスクが増加。危機は一層拡大した。

「地元当局者によると、この地域には毎日、給水車28台分の飲料水が輸送されているが、これは必要量の半分にすぎない」という。ファルージャでは先ごろ病院と水処理施設が砲撃を受けたため、さらに多くの市民の流出が懸念されている。

 しかし、同氏によると、切実に援助を必要とするこれらの人々を支援する取り組みは、戦闘の継続によって妨げられている。

「われわれは緊急に対応を強化する必要に迫られているが、3つの理由によって困難になっている。(その理由とは、)州内の治安悪化により、支援が必要な人々の元への訪問が妨げられていること、人々の避難先が国内各地に及んでいること、支援が不足していることだ」

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