【6月5日 AFP】スペイン国王フアン・カルロス1世(King Juan Carlos、76)の退位がこのたび発表されたが、識者たちは欧州の最年長君主であるエリザベス英女王(Queen Elizabeth II、88)には引退の気配すらないと口をそろえている──。

 昨年は、オランダやベルギーで君主の退位が相次ぎ、その流れに続く形でスペイン国王も退位した。しかし英女王をはじめ、遠戚に当たるノルウェー、スウェーデン、デンマークの各君主はこのまま在位し続けるとみられるという。

 英王室史家のヒューゴ・ビッカーズ(Hugo Vickers)氏は、「女王は神から権力を授かった君主であり、一生涯の統治を宣誓している以上、退位はしないだろう」と述べ、「そもそも退位は必要ない。何か問題が起これば、ジョージ3世(King George III)のように摂政を置けばいいのだから」と指摘している。ジョージ3世は精神的な病を患い、1811年から1820年に死去するまでの公務は長男が代行していた。

■女王に「退位」は禁句?

 エリザベス女王の父ジョージ6世(King George VI)は1936年、兄エドワード8世(King Edward VIII)が王位継承のわずか数か月後に退位したことを受けて、その後を継いだ。エドワード8世が離婚歴のある米国人女性ウォリス・シンプソン(Wallis Simpson)さんと結婚するために王位をなげうったという出来事は「スキャンダル」として国全体に大きな衝撃を与えた。

 この自分勝手で無責任な義務の放棄と世間からみなされたエドワード8世の退位により、エリザベス女王は王室の安定が揺るぐのを目の当たりにした。そのため「女王にとって退位は考えられないものであり、(退位を意味するAbdicationの)『Aワード』は禁句となっている」と指摘する専門家もいる。

 しかし2012年に戴冠60周年を迎えて以降、息子のチャールズ皇太子(Prince Charles)への公務委譲は徐々に行われている。女王の外遊は大幅に減り、代わりにチャールズ皇太子の外国訪問が増えている他、メディア対応を統合しているのも、より多くの公務を2人で一緒に執り行っていく方針の表れとみられている。

 かつて英君主として最長在位期間を誇ったのが、現女王の高祖母で1901年に死去したビクトリア女王(Queen Victoria)で、63年と216日間在位した。しかしエリザベス女王は来年9月10日に、その記録を更新するとみられている。(c)AFP