【6月4日 AFP】オーストラリアに生息するぬいぐるみのような動物のコアラは、汗腺がなく、めったに水も飲まない。そのためコアラが熱波をしのぐ方法は、長らく科学者たちの疑問だった。

 だが4日の英国王立協会(British Royal Society)の専門誌バイオロジー・レターズ(Biology Letters)に掲載された研究によると、コアラは周囲の環境よりも温度が数度低い木の幹に抱きつくことで熱波に対応していたことが分かったという。

 コアラは熱波の際の死亡率が高い。コアラは、汗をかくことができないため息を荒くして蒸発冷却を行うが、野生ではめったに水を飲むことがなく、また水が必要な時には水が不足している場合が多い。

 コアラの秘密を解明するため、動物学者のチームは2009年と2010~11年の冬から夏にかけて、オーストラリア南東部の野生のコアラ37匹を観察した。

 暑い日のコアラは四肢を伸ばした状態でいる頻度が高く、木の幹や木の下の方の枝に抱きついているように見えた。また、暑くなるほどコアラは木の下の方に移動し、また食料であるユーカリの木以外の木で目撃されることが多かった。

 これはユーカリの木の温度が気温よりも1.46~1.87度しか低くない一方、アカシアの木は約5度低くなることで説明がつくという。研究チームは、木の温度とコアラの行動から、暑い日にコアラは「かなりの量の」熱を体から木の幹に移していると結論づけた。

 論文は「水の入手が制限される熱波の中で、この行動により水を節約できることは、コアラの種の生存にとって致命的に重要かもしれない」と指摘し、「この研究結果は、木の幹が地表の上にある『ヒートシンク(放熱器)』として重要な役割を担っており、コアラを含めた木に生息する動物に涼しいミクロ環境を提供していることを示している」とまとめた。(c)AFP