【6月3日 AFP】インド北部カタラサダトガンジ(Katra Shahadatganj)村の女性たちにとって、夜のとばりが下りた後に家の裏に広がる野を歩くことは、普段から身の危険を感じる恐ろしい体験だ。しかし先月27日、野外に用を足しに出た少女2人が連れ去られ、集団レイプされた末に殺害された事件は、日々の試練に新たな恐怖をもたらした。

 農場労働者としてのわずかな収入で生活する5児の母マハラニ・デビさん(40)は「事件があってから、私たちは以前よりもさらに恐怖を感じるようになった」と語る。デビさんが住む3部屋からなる家には、この地区の大半の家と同様、トイレがない。

 先週に起きた12歳と14歳の少女殺害事件は、2012年12月に首都ニューデリー(New Delhi)で個人バスに乗り込んだ女子学生が集団レイプされ死亡した事件が生み出した激しい抗議運動と共鳴し、国内外で広く報じられた。

 しかし、野原で襲撃された少女らが置かれていた危険な状況は、インドでは珍しくない。法的理由から氏名が伏せられている被害少女らは事件の夜、自宅にトイレがなく、村にも公衆トイレがないために2人で野原に出かけた。

 国連児童基金(ユニセフ、UNICE)によると、インド人口の半分近い約5億9400万人が野外をトイレ代わりにしている。事件が起きた村があるウッタルプラデシュ(Uttar Pradesh)州バダユン(Budaun)県のような農村部の貧困地域では特に状況はひどい。

 インドのトイレ事情を調査した非政府組織(NGO)「ウォーターエイド(WaterAid)」のキャロリン・ウィーラー(Carolyne Wheeler)氏によれば、日が暮れてから野外で用を足すことを強いられているインド人女性は全体の約3分の1で、彼女らはトラブルに巻き込まれないよう、大抵は見張り役の友達と2人で連れ立って出かける。

「女性が一番危険にさらされやすく、無防備な時。こんなに多くの女性が毎日、野外で用を足すという危険を冒しているということは衝撃だ」とウィーラー氏はAFPに語った。

 被害少女の親族の女性はAFPのインタビューに対し「自分も野外に用を足しに行くときに怖い」と語った上で、当局には加害者をきちんと法で裁くことを望み、政府には村に公衆トイレを作ってもらいたいと訴えた。