■過剰医療が医師の収入に直結

 中国では、医師が過剰投薬や過剰治療を行ったり、患者や医薬品メーカーから賄賂を受け取ったりする行為が、公然と行われている。

 医療現場のこうした慣行に対する市民の怒りは極めて大きく、患者が医療関係者を襲撃・殺害する事件も頻繁に起きている。4月には東部・江蘇(Jiangsu)省で、包皮切除の手術を受けた男(45)が手術結果への不満を理由に医師を刺殺する事件が起きた。

 中国医院協会(China Hospital Association)の昨年の発表によれば、2012年に医療従事者と患者の暴力事案を報告した病院は中国国内の全病院の3分の2に上っている。一方、昨年の別の調査結果では、中国人の80%が医師の診察を受けるのは困難だと考え、95%が医療費が高額すぎると回答している。

 米シンクタンク「外交問題評議会(Council on Foreign Relations)」シニアフェローで中国の現代医療に詳しい黄延中(Yanzhong Huang)氏は、中国で医療費が高騰している理由の1つに、病院の収入の9割を薬剤の販売と医療サービスの提供が占めていることがあると指摘する。「病院が収入を最大化するため、過剰医療を行う強力なインセンティブ(誘因)がある」

 黄氏によると、病院だけでなく、医師たちのボーナスもこの収入の多寡に左右される。したがって「粘り強く告発を続ける」蘭医師は特別な存在なのだという。

■「命と金、どっちが大事?」

 中国の国営病院の医師の給与は、医師になるために必要な教育の長さを考えると、低いといえる。「生活するためには倫理観を脇に追いやることが必要」と蘭医師も認める。「他の道がないのだ」

 中国の医師たちは皆、治療や投薬、入院に同意させるため患者に同じ質問をするという。「あなたは命よりも金が大事なのですか」と。(c)AFP/Carol HUANG