【5月23日 AFP】不必要な心臓ペースメーカーの植え込み手術を指示し、のどの痛みを訴える女性に入院を強く勧める──医療トラブルがまん延し、患者が暴力に訴える事件が後を絶たない中国の医療現場の腐敗ぶりを、1人の女性医師が内部告発した。

 この医師は、四川(Sichuan)省・綿陽(Mianyang)にある国営病院で超音波室の主任を務めていた、蘭越峰(Lan Yuefeng)氏。自分の勤め先で過剰投薬や過剰治療が常態化している事実を暴露した結果、激しい非難を浴びることになった。

「ごく当たり前に行われていることだと思う。とても悲しいことだ」と、50代前半の蘭医師はAFPの取材に語った。

■病院内で村八分に

 蘭医師に転機が訪れたのは2009年、心臓ペースメーカーの植え込み手術を控えた53歳の男性患者の診療記録を調べたときだ。男性患者にペースメーカーは必要なかった。

 蘭医師をはじめとする綿陽市人民医院(Mianyang People's Hospital)の医師たちは、こうした過剰な医療行為を長く続けてきた。「でも、もう無理だった。私は(病院の)慣行に従い、(過剰医療を)続けてきた。妥協してきた。倫理基準をどんどん下げてきたのだ」と、蘭医師は告白した。

 ところが、蘭医師がこの事実を公表すると、同僚たちは激しく反発した。自分たちの生計を脅かす行為だとみなしたのだ。

「患者を退院させるなんて、病院をめちゃくちゃにする気か、と言われた」と蘭医師は当時を振り返った。「同僚たちは私に、食べ物を彼らの机の上に置いていくよう要求した。組織的な要求だった」

 さらに病院側は、蘭医師の内部告発の動機を攻撃し、職務遂行を拒否したため蘭医師を休職処分にしたと声明で発表した。だが、蘭医師は2年前に休職を通告された後も出勤し続け、「走廊医生(廊下医師)」として中国メディアで注目を集めた。

 同僚たちは、蘭医師を仲間はずれにし、病院の評判を引きずり下ろしたとして抗議のストライキを実施。そして今月、蘭医師の解雇を求める投票を実施し、同医師を追放した。