【5月23日 AFP】世界で初めて乳児用に小型化された人工透析装置によって、9か月で8人の子どもの命が救われたと、開発資金を集めたイタリアの科学者たちが23日、英医学専門誌ランセット(Lancet)に発表した。

 開発チームによると、低出生体重児の約18%、集中治療を受ける新生児の約20%は急性腎障害に見舞われていると推定されている。

 これまで腎臓障害のある乳児には、成人用の透析機器が使われてきたが、さまざまな器具の大きさが適合せず、体内にたまった老廃物が十分排出できないなどの問題があった。「驚くべきことだが事実だ。時計を修理するのに自動車用の工具を使っていたようなものだ」と伊ビチェンツァ(Vicenza)市、聖ボルトロ病院(San Bortolo Hospital)腎臓研究所のクラウディオ・ロンコ(Claudio Ronco)氏は言う。透析が必要になる乳児は少なく、採算が合わないとして企業が機器開発投資を嫌ってきたことが理由だという。

 ロンコ氏と同僚は、乳幼児用の透析装置の試作品を開発するための資金調達計画を立ち上げ、スポーツの試合やコンサートなどを行って約30万ユーロ(約4200万円)を集めた。イタリアの製造企業2社の支援も得ることができ、「小児用心腎緊急透析機(Cardio-Renal Paediatric Dialysis Emergency MachineCARPEDIEM)」が誕生した。

 最初の患者は体重2.9キロの多臓器不全の女児で昨年8月に治療を受けた。死の危機に瀕しており、透析以外に命を救う手だてはなかったという。この女児は25日間の透析を受け、腎機能を回復して50日後に自宅へ帰ることができた。

 それ以降、欧州でさらに9人の子どもが治療を受け、うち7人が生存している。これまで最悪では90%という高い死亡率だったことに比べ「驚くべき」結果だとロンコ氏は指摘し、「助かった女児と3日前に会ったが、その笑顔は40年分の医学の進歩のたまものだ」と喜びを語った。(c)AFP