【5月20日 AFP】米国は19日、米企業にサイバー攻撃を行って商業機密を盗んだいわゆるハッキングの疑いで、中国人民解放軍の将校5人を起訴した。中国側はこれに激しく反発し、サイバー問題での協力中止を発表した。

 ハッキングは以前から米中関係の大きな障害とみなされてきたが、今回の米国の動きで改めてこの問題が激化していることがうかがえる。

 米連邦大陪審はこの5人を、中国国営企業を利する目的で米企業のコンピューターに侵入した罪で起訴。このハッカー行為により、米国の鉄鋼や太陽光発電などの業界での失業増加につながったとしている。米政府がサイバースパイ行為で外国当局者を起訴したのは初めて。

 記者会見したエリック・ホルダー(Eric Holder)米司法長官は中国に対し、起訴された5人の身柄引き渡しを要請し、中国がこれに応じなかった場合、米国は「あらゆる手段」を講じる構えを示した。

 さらに、バラク・オバマ(Barack Obama)政権は「米企業の活動を不正に妨害し、公正競争の原則を損なおうとするどんな国家の行動も看過しない」として、「今回の起訴は、現存するサイバー脅威の深刻さを示す警鐘と捉えられるべき」という考えを示した。

 連邦大陪審はこの5人をそれぞれ31の罪状で起訴しており、有罪が認められれば最高で禁錮15年が科される可能性もある。

 検察当局によると、この5人の将校は中国人民解放軍の61398部隊に所属。米情報セキュリティー企業マンディアント(Mandiant)は昨年、同部隊が上海(Shanghai)郊外にある目立たない12階建てのビルに拠点を置き、知的財産や政府の機密情報を盗み出すため数千人の職員が勤務していると報告している。

■中国は激しく反発

 これに対し中国側は直ちに反応。今回の起訴は「事実無根で不条理」だとして、「国際関係の基本的な規範を著しく逸脱し、中米の二国間関係と相互信頼を危険にさらす」ものだと非難した。

 中国外務省の秦剛(Qin Gang)報道局長は声明で、「サイバー安保に関連する問題を対話と協力を通じて解決していくに当たり、米国側に誠意がみられないため、中国は中米共同のサイバー作業部会の活動中止を決定した」と発表した。

 この作業部会は昨年、ジョン・ケリー(John Kerry)米国務長官が北京(Beijing)を訪問した際に、サイバー安保の分野で高まっている緊張の緩和を目指す協議のために創設されたもので、同年7月にワシントン(Washington D.C.)で会合が開かれていた。(c)AFP/Shaun TANDON