【5月16日 AFP】メキシコ・ユカタン半島(Yucatan Peninsula)で1万2000年以上前に穴に落下して死亡したとみられる10代少女の骨から、最初期アメリカ先住民の起源に関する新たな手掛かりが得られたとの研究論文が、15日の米科学誌サイエンス(Science)に発表された。

 米テキサス大学(University of Texas)などの国際研究チームにより「ナイア(Naia)」と名付けられたこの少女の頭蓋骨は、アメリカ大陸でこれまでに発掘されたものの中では最古で、保存状態が最も良いものの1つだという。

 ナイアの遺骨は2007年、サーベルタイガー(剣歯虎)、オオナマケモノ、ホラアナグマなどの骨とともに、水面下約41メートルの水中洞窟の底に沈んでいる状態で発見された。

 スペイン語で「ブラックホール」を意味する「オヨ・ネグロ(Hoyo Negro)」と呼ばれるこの地域は、ナイアが落下した約1万2000年~1万3000年前は地上の乾燥地帯だった。

 氷河の融解で海面上昇が起き、洞窟はこの8000年間で水に覆われた。

 当時15~16歳だったと考えられているナイアは、一緒に見つかった動物たちと同様に、ただの水たまりに見えた穴に滑り落ちてしまったのかもしれない。

 ナイアの骨盤には骨折した形跡が見られることから、落下時の衝撃で即死したことが示唆されると米ワシントン(Washington)州在住の考古学・法医学人類学者、ジム・チャターズ(Jim Chatters)氏は指摘する。

 ナイアの頭蓋骨からは、小さく細面の顔、広い間隔の目、突き出た額、外向きの歯が見て取れる。この外見についてチャターズ氏は「アメリカ先住民の容姿とはほぼ正反対」だと語った。

 だが、ナイアのあばら骨と歯から見つかった遺伝子マーカーは、母方の遺伝系統が現代アメリカ先住民の一部と同一であることを示した。