■アジアの起源

 ナイアは、ベーリング地峡(Beringia)として知られる陸塊を越えて、アジアからベーリング海峡(Bering Strait)を横断して移動してきた人々の血を引くことを、今回の論文は示唆している。

 テキサス大のデボラ・ボルニック(Deborah Bolnick)助教は「今回の研究が初めて提示しているのは、このような顕著な特徴を持つパレオ・アメリカン(古代アメリカ先住民)もまた、現代アメリカ先住民と同じく(当時は陸地だった)ベーリング海峡を渡ってきた人々に直接結びつく可能性がある証拠だ」と説明した。

 アメリカ先住民について一部の専門家らは、もっと最近になってから、おそらく欧州、東南アジア、オーストラリアから移り住んだと思われる人々の子孫だとする説を提唱しているが、今回の結果はこれに反するものだ。

 ワシントン州で発見された9800年前の「ケネウィック人(Kennewick Man)」の頭蓋骨と骨格の化石に関する研究で最も良く知られている考古学者のチャターズ氏は「私もかつては、移住が複数回起きたとする説の支持者の1人だった」と話す。

 チャターズ氏は当初、頭蓋骨が典型的なアメリカ先住民の顔とは似ていなかったため、ケネウィック人は欧州からの移住者の子孫と考えていた。

 だがナイアのDNA分析などを含むその後の研究によって、最古のアメリカ先住民はどこから来たかに関する同氏の考え方が変わったという。

 ナイアに関する研究を進めている国際研究チームは、ナイアのミトコンドリアDNAから「mtDNAハプログループD1」と呼ばれる遺伝子マーカーを特定した。

 ボルニック氏は「ハプログループD1は、アジア系統に由来するものだが、現在ではアメリカ大陸でのみ見られる」と説明。「アメリカ先住民の約11%がこの遺伝系統を示している」と付け加えた。

 現時点での研究チームの分析は、パレオ・アメリカンとして知られる他の古代人がベーリング地峡以外の場所から来た可能性を排除できないが、今回の証拠はその可能性の裏付けにはなっていないとボルニック氏は指摘している。

 チャターズ氏によると、ナイアはアメリカ大陸で発見された旧人類の中で6番目に古いという。

 今後の研究はナイアの核DNAの配列を調べることを目的としており、ナイアの先祖に関する詳細がさらに明らかになるとみられている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN