【5月12日 AFP】イラク当局は11日、同国北部のイラク軍駐屯地が武装集団の襲撃を受け、兵士20人が拉致されたうえ射殺されたと発表した。イラクでは先月末に行われた総選挙の開票作業が続いているが、治安は悪化する一方で、今年に入って既に3200人以上が死亡する中で宗派間抗争の再燃が懸念されている。

 イラク治安当局筋などによると、兵士らの遺体は10日夜、駐屯地からさほど離れていない場所で発見された。イスラム武装勢力「イラク・レバントのイスラム国(Islamic State of Iraq and the LevantISIL)」が「サファビ軍を狙った」との犯行声明を出している。サファビ軍とは、かつてイランを支配したサファビ王朝に由来するイラク治安部隊の蔑称。

 ISILとイラク陸軍高官によると、襲撃は今月5日に北部ニナワ(Nineveh)州の陸軍駐屯地で起きた。同州は武装集団の活動が活発で、国内でも最も治安が悪い地域の1つ。先月にも、州都モスル(Mosul)の陸軍基地が襲撃され、兵士12人が死亡している。

 イラクでは、反政府派の武装組織が治安部隊を攻撃する事例が相次いでいるが、これほど多くの兵士が一度に1か所の軍事拠点から拉致されるのは珍しい。

 当局は国内の治安悪化について隣国シリアでの内戦など外部要因によるものだと主張しているが、専門家や外交筋はイスラム教シーア派(Shiite)主導の政府が、少数派スンニ派(Sunni)の抱く不満に対してより対話努力を強化することこそが武装組織の弱体化につながると指摘している。(c)AFP