【5月10日 AFP】シリア中部のホムス(Homs)で9日、反体制派と政府側の合意に基づいて7日に始まった旧市街からの反体制派の撤退が完了した。政府側にとっては象徴的な勝利となった。

 かつてバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領に反対する「革命の首都」と呼ばれたホムスで反体制派側が掌握する地区は1つだけになった。

 ホムス県のタラル・バラジ(Talal al-Barazi)知事は、「ホムス旧市街からの武装勢力の撤退が完了した」と述べた。 同知事によると、ホムスで唯一、反体制派が抵抗を続けているワイル(Wael)地区からも数週間以内に反政府派が撤退する方向で交渉は大きく進んでいるという。

 シリア内戦で政府側と反体制側が合意に達したのはこれが最初ではないが、反体制派の戦闘員が、政府側との取り決めに基づいて一度は制圧した地域から撤退するのはこれが始めて。シリアの主要同盟国であるイランの大使が仲介した交渉を経てシリアの政府と反体制派が合意文書に署名したのも今回が初めて。

 シリア政府は、ホムス以外の場所で反体制派に拘束されていたイスラム教シーア(Shiite)派の分派アラウィ(Alawite)派の女性と子供の計40人、イランの女性1人、シリア軍兵士30人の解放と引き換えに、武装勢力が個人の武器を持ってホムスから撤退することを認めた。

 反体制派の撤収は主に7日と8日に行われたが、最後の250人がバスで撤退するのは9日にまで遅れた。シリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)によると、撤退合意に参加していない武装勢力が、シリア北部のアレッポ(Aleppo)県で反体制派が包囲している政府側の2つの町ヌボル(Nubol)とザワラ(Zahraa)への食料の輸送を阻止したことがその理由だという。

 食料輸送は主に反体制派の約2000人がホムスから安全に撤退することを保証する交換条件として実施されることになっていた。9日になってザワラに食料が運び込まれたため、ホムスからの最後の反体制派の撤退が許可された。