【5月9日 AFP】南アフリカのネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)元大統領の追悼式で「でたらめ手話通訳」として世界の注目を浴びた男性がこのほど、ライブ配信用アプリの広告キャンペーンに起用された。

 タムサンカ・ジャンティ(Thamsanqa Jantjie)さんは、昨年12月に行われた故マンデラ氏の追悼式でバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領やマンデラ氏の孫などの演説の手話通訳を務めたが、手話として意味を成さない「でたらめ通訳」だったと批判を浴びた。

 そのジャンティさんが出演するストリーミング配信アプリ「ライブレンズ(Livelens)」のコマーシャル(CM)ビデオは、「ネルソン・マンデラ追悼式のタムサンカ・ジャンティです」との自己紹介から始まる。

 ジャンティさんは続けて、手話をしながら「信じてください。私は本物の手話通訳です」と言う。しかし、この映像には手話の吹き替え訳として「私は手話は──していません」という女性の声がかぶせられている。

 場面が切り替わり、演壇に立ったジャンティさんが「起きてしまったことに、心からお詫びを申し上げます」と語る。だが、これをジャンティさん自らが手話に訳した映像は、再び女性の声で「私は有名人。全世界で有名になりたい。今度はお金のために働いています」と吹き替えられている。

 最後はジャンティさんが上着を脱ぎ、ダンスを踊ってCMは終わる。

 ライブレンズは交流サイトのフェイスブック(Facebook)の自社ページで、CMの反響の大きさに驚きを表明。耳が不自由な人々を軽視する意図はないと断りつつ、「人には第2のチャンスが与えられるべきだ。タムサンカ(ジャンティさん)は精神に障害があり、過ちを犯したことを何度も認めている。それなのに、一生とがめられるべきだろうか」と述べている。

 米放送局NBCによれば、CMが撮影されたのは2月で、ジャンティさんは1か月以上にわたって入院していた精神病院から退院して撮影に臨んだという。出演料は公表されていない。(c)AFP