【5月9日 AFP】10日に決勝大会が行われる欧州国別対抗歌謡祭「ユーロビジョン・ソング・コンテスト(Eurovision Song Contest)」で、黒々とひげを生やしたドラァグクイーン(女装パフォーマー)のコンチータ・ウルスト(Conchita Wurst)がオーストリア代表として出場し、話題を独占している。一方でそのパフォーマンスは、欧州各国の保守層ではもちろん、同性愛者の間でも物議を醸している。

 オーストリア人歌手トム・ノイビルト(Tom Neuwirth)(25)の「女装版の人格」であるウルストは、2011年、リアリティー番組に初登場して一躍有名になり、翌12年にユーロビジョンのオーストリア代表を決定するテレビ番組で準優勝した。

 今年のユーロビジョン開催地、デンマーク・コペンハーゲン(Copenhagen)で最近行われた記者会見でウルストは、「私がこのひげ面の女性を生み出したのは、人は自分のしたいことを何でもできるんだということを世界に示したかったから」と語った。「他人を傷つけない限り、私たちは人生で何でも好きなことをやっていい。くさいせりふだけど、(人生は)一度きりなんだから」

 ウルストは、8日の準決勝でスパイ映画「007」のテーマ曲風バラード「ライズ・ライク・ア・フェニックス(Rise Like a Phoenix)」を歌い、決勝進出を決めたが、業界の間ではウルストが優勝を手にするという見方は少ない。

 だが、今年の優勝候補とされるアルメニア代表のアラムMP3(Aram MP3)が、ウルストのライフスタイルは「自然ではない」とコメントしたことから、ウルストの知名度は一気に上がった。

 さらにウルストについては、これまでにウクライナ、ベラルーシ、そして昨年ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が「同性愛プロパガンダ(宣伝)」禁止法を成立させたロシアの3か国で、ユーロビジョンへの出場禁止を求める請願が立ち上げられている。