【5月7日 AFP】ユダヤ人から略奪した作品を含む大量の絵画をドイツ・ミュンヘン(Munich)のアパートに秘蔵していたナチス・ドイツ(Nazi)時代の画商の息子、コルネリウス・グルリット(Cornelius Gurlitt)氏(81)が6日、死去した。

 グルリット氏の代理人のステファン・ホルツィンガー(Stephan Holzinger)氏は声明で、グルリット氏はミュンヘンの富裕層地区にある自宅で、医師立ち会いの下で死去したと発表した。グルリット氏は最近、大きな心臓手術を受けて1週間入院した後、自宅療養を希望していたという。

 グルリット氏の自宅からは2012年2月、長年その所在が不明だったパブロ・ピカソ(Pablo Picasso)、アンリ・マチス(Henri Matisse)、マルク・シャガール(Marc Chagall)などの名作を含む1280点の芸術作品が、小規模の脱税捜査の過程で偶然発見され、押収されていた。

 数億ドル(数百億円)の価値があると見積もられているこれら作品の中には、第三帝国(Third Reich)の支配下でユダヤ人から略奪されたりだまし取られたりしたものも含まれており、グルリット氏は今年4月、正当な所有者を突き止めるのを助ける合意をドイツ政府との間で結んでいた。

 これらの絵画の大半は、同氏の父親の画商ヒルデブラント・グルリット(Hildebrand Gurlitt)氏が1930~1940年代に入手したものだった。ヒルデブラント氏はこの年代にナチスの命を受け、アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)政権が「退廃的」とみなしてユダヤ人家族から奪った作品やドイツの美術館から押収した前衛芸術作品を売りさばいていた。

 4月の合意では、政府から任命された美術専門家らによる国際調査団が1年間、ミュンヘンにあるグルリット氏のコレクションの作品すべてについて、来歴を調査する予定になっている。この調査後に所有権問題が発生した芸術作品については、問題が解決するまで信託人の管理下に置かれる。

 ホルツィンガー氏は、コルネリウス氏が有効な遺言書を残しているかどうかは不明だと述べているが、バイエルン(Bayern)州法務局はAFPの取材に対し、4月の合意はいかなる相続人に対しても適用されるとの見解を示し、「絵画に対する調査は疑いなく進められる予定だ」と述べている。(c)AFP/Deborah COLE