■アーティストたちの本音は

 夜の闇に包まれたボタフォゴ(Botafog)地区で、覆面姿のアーティスト2人が、巨額のW杯開催費用に抗議するグラフィティを大学の壁に描き始めた。「フィウス(Fiuz)」と「ペク1(Peq1)」と名乗る2人は、こう批判した。「人々はW杯を大衆のお祭りだと言う。だが、実際は金持ちのための大会だ」

「僕たちはW杯に反対だ。なぜなら、ブラジルにはまともな公共サービスさえないのに、国際サッカー連盟(FIFA)がやってきて自分たちの基準を押し付けたからだ。人々は病院で死んでいき、教育制度は冗談と化している」

 2人の作品はリオで最先端を行く中心街ラパ(Lapa)地区にもある。その1つは、見る人に「(ワールド)カップは誰のため?」と問いかけている。

 一方、プロの画家だが「自由に自分を表現できる」としてグラフィティを好んで描いているジャンベイロ(Jambeiro)さん(44)の見方は異なる。W杯とは「カーニバルで、サッカー」だというのだ。

 ラパ地区には、ジャンベイロさんのグラフィティが幾つも並んだ路地がある。昨年6月のコンフェデレーションズカップ2013(Confederations Cup 2013)でのブラジル優勝を祝した壁画に混じって、ネイマールが蹴ろうとするサッカーボールにFIFAのジョセフ・ゼップ・ブラッター(Joseph Sepp Blatter)会長の顔を描いた作品もある。

 だが、ジャンベイロさんはAFPの取材に「私は、W杯に反対ではない。むしろ、その逆だ」と主張した。「抗議運動にも参加している。(グラフィティは)サッカーも大事だけれど、医療や教育もちゃんとしてほしいと主張する私なりのやり方なんだ」 (c)AFP/Yann BERNAL