【5月1日 AFP】失われた記憶の回復機能を持ちうる脳への埋め込み装置について、米軍の極秘研究チームが今後数か月以内に発表を行う──。

 バラク・オバマ(Barack Obama)大統領が1億ドル(約100億円)の予算を投じる脳機能に関する研究「BRAIN」の一環として、米国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects AgencyDARPA)は現在、記憶回復装置の構築を目的とした4年計画を進めている。

 この種の研究は今まで一度も行われたことがなく、また負傷兵の治療や高齢化した脳への対処として人の脳を操作して良いのかという倫理的な問題も未解決のままだ。しかしその一方で、全米500万人のアルツハイマー病患者やイラクやアフガニスタンでの戦争で脳に外傷を負った米軍兵士30万人に利益をもたらすものと支持する声もある。

「軍務中に負傷して家族を思い出せなくなった人に、その機能を取り戻してあげることができれば」と、DARPAのプログラムマネジャー、ジャスティン・サンチェス(Justin Sanchez)氏は今週、米テキサス大学(University of Texas)脳健康センター(Center for Brain Health)が米ワシントンD.C.(Washington D.C.)で開催した会議で語った。

「海馬と直接的に相互作用する人工神経装置を開発し、陳述記憶を回復させることができると考えている」(サンチェス氏)

 陳述記憶は人や出来事、事実、数字などの記憶で、これまでのところ、一度失われた後で回復した研究事例は存在しない。

 現在の進展についてサンチェス氏は、今後数か月以内に正式に発表される見通しを示し、「わが国で最も優秀な科学者らが集まりこのプロジェクトに携わっている。期待して待っていてほしい。多くの刺激的なことが極めて近い将来発表されるだろう」と述べた。

(c)AFP/Kerry SHERIDAN