【4月30日 AFP】宗教間の対立が深刻化している中央アフリカで、キリスト教徒の攻撃を恐れて首都バンギ(Bangui)から北部へ向かっていたイスラム教徒らが、武装集団の待ち伏せ攻撃を受け、民間人2人が死亡した。国際平和維持部隊の隊員が29日、明らかにした。

 イスラム教徒1300人を乗せたトラック18台は27日、平和維持部隊「中央アフリカ支援国際ミッション(MISCA)」の部隊に護送されてバンギを出発していた。だが、隊員の1人がAFPに語ったところによると、28日午後、首都から北に300キロ離れた地点で、木々の上に潜んでいた武装集団からの銃撃を受け、イスラム教徒2人が死亡、6人が負傷した。

 同隊員は、銃撃を行ったのは主にキリスト教徒からなる民兵組織「反バラカ(Anti-balaka)」だとしている。反バラカはここ数か月にわたり首都でイスラム教徒を狙った攻撃を繰り返しており、今回のイスラム教徒大量脱出につながっていた。

 イスラム教徒らは、バンギ市内のPK-12地区を離れ、治安悪化を比較的にまぬがれている北部へと向かっていた。同地区ではイスラム教徒が去った直後、近くで待ち構えていた数百人の若者らが無人となった家々から物品を略奪し始めた。現地のAFP特派員は29日、イスラム教徒が住んでいた家屋少なくとも200棟が略奪被害を受けたことを確認した。

 人口の8割がキリスト教徒の同国では、少数派のイスラム教徒らがバンギのPK-12地区に避難し、イスラム教徒が多く住む隣国チャドに向かう車に乗る機会を待っていた。だが、避難民らはその代わりに、5か月にわたり敵対するキリスト教徒らに囲まれて生活することになり、反バラカによる襲撃を頻繁に受けていた。

 居住者らによると、同地区では12月以降に22人が死亡し、うち18人は暴力による死者だった。さらに数え切れないほどの人々が銃や爆弾、刃物で襲われ負傷したという。

 既に数万人のイスラム教徒が北部へ逃れ、南部にはイスラム教徒はほとんどいない。隣国のチャドやカメルーンに逃亡した人たちもいる。

 同国での宗教間対立は、イスラム系武装勢力の連合体セレカ(Seleka)が2013年3月から10か月にわたり政権を握り、一部メンバーが民間人に対する残虐行為に及んだことで激化した。キリスト教徒らは反バラカを結成し、イスラム教徒に対する報復を開始。標的とされたのは主に罪のない人々だった。

 セレカは、暫定大統領となった指導者ミシェル・ジョトディア(Michel Djotodia)氏によって公式には解体されたが、セレカの過激派メンバーらは現在も事実上の分裂を積極的に推進している。

 先週にはアントワネット・ムーサ(Antoinette Moussa)国民融和相が、集団移動は和平実現の努力の障壁になりかねないと警告。人々を宗教や民族ごとに移動させることは「文化的・社会学的な不均衡」をもたらす恐れがあると述べていた。(c)AFP