【4月29日 AFP】米軍撤退後初の議会選が今月30日に行われるイラクで28日、兵士や警察官の事前投票が行われた中、首都バグダッド(Baghdad)や、同国北部や西部の各地で自爆を含む爆弾攻撃が相次ぎ、全土で合わせて57人が死亡、120人以上が負傷した。30日の投票日に一般の有権者が安全に投票できるのか深刻な懸念が生じている。

 バグダッドとその北郊の複数の都市では、自爆用のベルトを着用した9人が主に投票所を攻撃。また、道路脇に仕掛けられた爆弾で軍の車両が被害を受け、選挙を取材中の報道陣も狙われた。

 最も大きな被害が出たのはバグダッドの北東、イランとの国境に近く、住民の大半がクルド人のカナキン(Khanaqin)。ジャラル・タラバニ(Jalal Talabani)大統領が率いるクルド愛国同盟(Patriotic Union of KurdistanPUK)の事務所のそばで、脳卒中の治療のためドイツ滞在中のタラバニ氏が投票する様子の動画の公開を祝って人々が集まっていたところに単独犯による自爆攻撃があり30人が死亡、さらに少なくとも50人が負傷した。

 また北部の主要都市モスル(Mosul)では、軍の車両に乗って選挙の取材に当たっていたイラク人ジャーナリスト6人が爆弾攻撃を受けて負傷した。

 同日早朝は各地で厳重な警備の下、兵士や警察官らが投票所の外に列をつくり、投票が終わるとその印として紫色のインクを指先につけて出てくる様子が見られていた。しかし一連の爆弾攻撃で、平穏な雰囲気は一気に消し飛んだ。

 犯行声明を出したグループはなく、政府当局者もこれらの攻撃について公式な発表は行っていないが、イラクではこれまでに政治プロセスを混乱に陥れる目的でイスラム教スンニ(Sunni)派の武装集団が自爆攻撃を行ってきたとされている。

 イスラム教シーア(Shiite)派でアラブ系という多数派に属するヌーリ・マリキ(Nuri al-Maliki)首相は、権力を独占して少数派を冷遇しているという批判を受けているが、今回の議会選挙で3期目の首相就任を目指している。しかし国民の間では、基本的な行政サービスの不備や汚職のまん延、高い失業率、後を絶たない暴力などへの不満が広がっている。(c)AFP/Tom Little, Mohamad Ali Harissi