【4月21日 AFP】韓国を悲しみに包んだ旅客船沈没事故には、世界中から同情や哀悼、励ましの声が寄せられているが、そうした中で際だっていながらも、全くの予想外とは言えない例外がある。

 北朝鮮は、16日に高校生ら476人を乗せて沈没した旅客船セウォル(Sewol)号の事故について、世界中のメディアがトップニュースとして伝えるなか、これまでほぼ沈黙を貫いてきた。

 バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)露大統領、習近平(Xi Jinping)中国国家主席ら約45か国の首脳が、政治体制や地勢の垣根を超えて韓国に弔意のメッセージを送っている。

 一方、金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)第1書記から事故への言及は一言もない。北朝鮮の国営朝鮮中央通信(Korean Central News AgencyKCNA)によれば、セウォル号が完全に沈没した16日夜、正恩氏はメンバー全員が女性の「牡丹峰楽団(Moranbong Band)」の公演を「堪能」していたという。

 北朝鮮がセウォル号の事故について言及した唯一の特筆すべき事例は、KCNAが19日、ニュース報道のなかで「多数の犠牲者が出ている」などと簡単に伝えたものだ。

 KCNAは、遅々として進まない政府の対応への乗客の家族らの怒りに焦点を当てた韓国メディアの報道を引用して沈没事故を伝えており、KCNAからの唯一の解説は、韓国政府は家族の悲しみと怒りを「しっかりと心に留めるべきだ」との当てこすりだった。

 朝鮮戦争後の韓国で最悪の悲劇となる恐れが出ているセウォル号の事故に対する北朝鮮側の反応には、韓国のインターネット界では怒りの声が噴出している。(c)AFP